低血糖の症状って、どんなものがあるんだろう?
低血糖かどうか、チェックをするのは自分ではできるの?
まだ低血糖を経験したことがない人では、低血糖の症状がどのようなものなのか、イメージできない、セルフチェックできないという人も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、低血糖の症状のチェック方法や、対処法について解説していきます。
目次
低血糖の症状
低血糖により出てくる症状は、人により違います。症状の現れ方や強さも人により違いますし、時間によっても変化します。
低血糖の症状をチェックするためには、事前にどのような症状があるのか、しっかりと理解しておく必要があります。
低血糖で見られる症状は下記の通りです。
【低血糖で見られる症状】
・動悸
・発汗
・脱力
・頭痛
・眠気
・精神症状
・意識レベルの低下
など
血糖値別の低血糖症状
体内の血糖値により、出てくる症状は変わってきます。
いわゆる低血糖の状態は、70mg/dl未満の状態を低血糖としています。
血糖値が55mg/dl程度になると、アドレナリンが分泌され始め、交感神経症状が出始めます。交感神経症状とは、自律神経の交感神経が過剰に働いた時に見られる症状のことです。代表的な症状としては、動悸や発汗、手足の震えなどがあります。
50mg/dl程度になると、中枢神経症状が出始めます。中枢神経症状とは、脳の機能が低下し始めることにより起こる症状のことです。具体的な症状としては、眠気や脱力などが挙げられます。
30mg/dl程度になると、脳の機能が低下し、痙攣や意識消失、一過性の片麻痺、昏睡症状などが見られるようになります。
血糖値が低下し脳機能が低下すると、死亡する可能性も出てきます。
低血糖が進行すると、自力では回復が困難になるほど、動けなくなってしまうことがあります。回復に人の助けが必要な状態のことを、重症低血糖と呼びます。
重症低血糖は死亡する可能性があり、助かったとしても脳に障害を残す可能性も考えられます。重症になってしまうと、口からブドウ糖を摂取することもできなくなってしまう可能性が考えられるため、非常に怖い状態です。
このようにならないためにも、低血糖症状になっていないか日頃からチェックすることが重要になってきます。
低血糖症状を頻繁にチェックして注意したい時
糖尿病の人が、「食事を取れなかった」、「量が少なかった」など、食事に関して予期しないことがあると、低血糖になるリスクが出てきます。
また、激しい運動をした時に、一時的にエネルギー不足になっても低血糖のリスクが出てきます。
普段摂取しているエネルギー量が少なくなった時や、エネルギー消費量が多くなったときは、注意が必要になってきます。
その他、ストレスでも低血糖症状が出る人もいますので、精神状態にも注意する必要があります。
重症低血糖の怖さ
重症低血糖になってしまうと、脳に障害を残してしまったり、心臓の機能が低下してしまったり、死亡することも考えられます。また、認知症の発症リスクも高くなるとされています。
低血糖を起こす方の中には、無自覚の方もおり、重症化するまで低血糖に気づかないこともあります。
軽症の低血糖に気づかないため、自分では対処ができないほどの低血糖にならないと気づきません。
そのため、ブドウ糖などを持っていたとしても、自分で取り出すこともできなくなってしまいます。初期の低血糖に気付きにくい人は、重症な低血糖になる可能性が6〜17倍高いとされています。
また、低血糖による自動車事故も報告されているため、無自覚に低血糖が生じてしまう人は、特に注意が必要だと言えます。
低血糖の対処法
低血糖時の対処法は、「自分で口から糖分を摂取できる場合」、「自分では糖分を摂取できない場合」の2つのパターンに分かれます。
自分で口から糖分を摂取できる場合
他の人の手伝いが必要でも、口から糖分を摂取できる場合は口から糖分を摂取します。砂糖を摂取しても良いのですが、理想はブドウ糖です。
清涼飲料水にもブドウ糖は入っていますので、それでも良いです。
自力で口から糖分の摂取が困難な場合は、直ちに救急車を呼び、医療機関へ搬送してもらってください。命に関わることもあるため、緊急性が高いです。
2020年から点鼻グルカゴンという点鼻薬を選べるようになりました。
点鼻グルカゴンとは、1回分のグルカゴン粉末という糖分が入っている、使い切りの点鼻薬のことです。
室温でも保存が可能で、使用方法も簡単です。鼻にグルカゴン点鼻薬を当てて、ピストンを押すだけ。粉末が鼻に放出され、鼻の粘膜からグルカゴンが吸収されます。ご家族での投与が可能なので、事前に使用方法などを家族でよく確認しておきましょう。
以前は、重症の低血糖の応急処置で、ご家族による注射が処方されていました。
しかし、注射をするまでに薬剤の調整が必要なため、あまり医師も処方をしていなかったようです。点鼻薬はピストンを押すだけなので、ご家族による投与もハードルが低いでしょう。
まとめ
今回の記事では、低血糖の症状や頻繁にチェックをするべき時、重症低血糖などについて解説してきました。
重症低血糖は死亡する可能性があり、脳に障害を残す可能性や認知症の発症リスクを上げる可能性があります。いずれにしても、治らない症状を残してしまう可能性があるため、重症低血糖にならないように日頃から注意しておく必要があります。
もし、重症低血糖になった時にいち早く助けてもらえるように、ご家族とよく話し合いをしておく必要もあります。
また、糖尿病であることがわかるカードなどを身につけておくだけでも、緊急時の対応が変わる可能性があります。
できるだけリスクを低くできるように、日頃からのチェックと緊急時の対策をしっかりとしておきましょう。
参考文献
・大平哲也, et al. “血糖変動と精神症状に関する国内外の研究の動向.” 全人的医療 20.1 (2022): 25-30.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ifcm/20/1/20_25/_pdf/-char/ja
・南和, et al. “糖尿病治療に伴う低血糖の病態と治療.” Therapeutic Research 43.2 (2022): 127.
http://therres.jp/3topics/images/feature/20220228115118.pdf
監修:医師 津田康史