再生医療はパーキンソン病に効果があるのか?発症原因や治療法を紹介

パーキンソン病はゆっくり進行する病気であり、現在の医療では症状を緩和する治療が行われています。

そんななか、iPS細胞を用いた再生医療の治験が進んでおり、新たな治療の光が見えてきました。

パーキンソン病の効果的な治療方法である再生医療の詳細や、原因などが気になっている方もいるのではないでしょうか?

 

本記事を読むことでパーキンソン病の症状や再生医療の要となるiPS細胞について理解を深めることができます。

パーキンソン病の詳細が気になったり、薬物による症状コントロールに悩んでいたりする方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

1.パーキンソン病は治せる病気なのか?

パーキンソン病は難病に指定されており、原因解明と治療確立に向けた研究のために、国が定めた制度があります。

症状が複雑であり、日常生活に大きな影響を及ぼすので、分類による症状の評価が重要です。

 

 

1−1.パーキンソン病の影響による運動機能の低下

パーキンソン病は、以下の四大徴候が出現します。

 

  • 安静時の振戦(安静時にみられる規則的なふるえ)

 

  • 筋固縮(関節を曲げた際にガクガクとした筋肉の抵抗がある)

 

  • 無動、寡動(身体の動きが鈍く、表情の変化が乏しい)

 

  • 姿勢反射障害(小刻みで足をすった歩き方、前傾姿勢、転倒のしやすさ)振戦

 

初期から現れる症状は、振戦や筋固縮、無動が多く、緩徐進行性の経過をたどります。個人差はありますが、一般に発症してから10年程度は自立した生活が可能です。

ですがそれ以降は介助を要することが多い傾向にあります。

 

 

1−2.難病医療費補助制度による「重症度」の分類

パーキンソン病は神経難病のなかでもっとも患者数が多い疾患です。症状の程度により難病医療費補助制度が利用できます。

 

難病医療費補助制度とは、疾患の効果的な治療法が確立されるまで、医療費の負担を支援する制度。

患者さんの病状や治療内容を把握することで、研究の推進を図ることを目的としています。

 

パーキンソン病で難病医療費補助制度の対象となるのは、重症度分類ステージ3以上の方です。

 

パーキンソン病に関する重症度分類

ステージ1 障害が身体の片側のみ、日常生活の影響はほとんどなし
ステージ2 障害が身体の左右両方、日常生活の介助は不要
ステージ3 明らかな歩行障害の出現、日常生活動作障害が進む
ステージ4 起立や歩行など日常生活動作の低下、多くの介助が必要
ステージ5 介助による車いす移動または寝たきり、全介助が必要

 

 

1−3.難病医療費補助制度による「生活機能障害度」の分類

下記の生活機能障害度2度以上に該当する患者が、パーキンソン病をはじめとする各種難病の「難病医療費補助制度」の対象になります。

 

生活機能障害度

1度 日常生活、通院にほとんど介助を要さない
2度 日常生活、通院に部分的介助を要する
3度 日常生活に全面的な介助を要し、歩行起立不能

 

この支援制度は1年間有効で、世帯の所得に応じて自己負担額が決定されます。引き続き医療費の助成を希望される場合は、更新申請の手続きが必要です。

 

 

 

2.パーキンソン病の治療で注目されるiPS細胞を用いた再生医療

京都大学iPS細胞研究所では2018年から、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた、パーキンソン病の症状を改善させる世界初の治験を開始しました。

 

症状と付き合いながら自分の力で生活できる、注目度の高い最新の再生医療についてご紹介します。

 

 

2−1.パーキンソン病治療で有効的とされるiPS細胞(人工多能性幹細胞)

iPS細胞は人間の皮膚や血液などの細胞に、少数の因子を導入して培養することで、新たな組織や臓器の細胞を増殖する能力をもつ細胞です。

 

iPS細胞からドパミン神経細胞を作り、脳内に移植することで脳内のドパミン量を増やして症状を改善させます。

他人の細胞を移植する「他家移植」は、一度に多くの細胞を準備することができ、多くの費用と手間を削減できるのです。

 

一方、リスクとしては下記が考えられます。

 

  • 他家移植で移植したものを異物と捉え、免疫反応が起こる可能性

 

  • 移植の際に、もともとの細胞に傷がつく。または未分化細胞が残存することでiPS細胞が腫瘍化する懸念

 

このような課題は、緻密な研究により着実に成果をあげ、安全性を高めることに成功しています。

 

 

2−2.再生医療であるiPS細胞で確認されている成果

研究グループはヒトiPS細胞を用い、下記の安全性と有効性を確認しました。

 

  • iPS細胞で作られたドパミン神経細胞が、パーキンソンモデル動物の脳に正常に機能し、行動の改善が図れた

 

  • 誘導したドパミン神経細胞を高度に濃縮でき、移植後に増殖する可能性のある細胞は濃縮過程で除去される

 

  • がん関連遺伝子に異常がなく、免疫の低下がみられるマウスへの移植で腫瘍形成が認められなかった

 

治験は7名の対象患者に行われ、2年間にわたり経過を観察します。細胞移植の安全性と有効性を得る症例を重ねることで、パーキンソン病で寝たきりになる患者をゼロにすることが目標です。

 

 

 

3.パーキンソン病を発症する原因

パーキンソン病とは、脳の中の黒質にあるドパミン神経細胞が脱落することで運動機能障害を引き起こす病気です。

一部遺伝子の変異が関連しますが、ドパミン神経が変性脱落してしまう原因は不明。

ドパミンが送られる線条体は運動の調節にもっとも関与しており、振戦や固縮、無動などのパーキンソン病特有の症状を生じます。

 

パーキンソン病は加齢と深い関係があり、10年間で平均10%程度のドパミン神経が変性脱落していくことが多くの研究でわかっています。

超高齢社会に突入したわが国において、今後パーキンソン病患者は爆発的に増えることが予測されます。

 

 

 

4.パーキンソン病の一般的な治療方法

パーキンソン病は根本的な治療方法が確立しておらず、症状に応じて対処していく「対症療法」が中心です。

 

現在の治療では主にドパミン作動性薬剤を使用します。症状が多岐にわたるため、薬剤を組み合わせて使用することが基本。

 

そんななかで注目されているのが、iPSs細胞による再生医療です。近年の研究ではパーキンソン病にも効果的であることが判明しています。

難病指定されているパーキンソン病への有効的な治療方法として、一般的に導入される未来も、そう遠くないかもしれません。

 

 

 

5.まとめ:パーキンソン病の治療には再生医療が注目されているため今後の展望に期待

パーキンソン病を完治させる治療方法は、現在でも確立されていません。

一般的な治療方法は主に進行を遅らせる薬物療法のみ。

しかし薬物には吐き気や便秘、幻覚などの副作用が現れる場合があります。

 

そんななかで注目されているのが再生医療です。

iPS細胞で運動機能障害が軽減すれば、薬物での副作用に悩む必要がありません。

こまやかな内服調整がなくなるだけでも、生活の負担は大きく軽減されるでしょう。

 

パーキンソン病による特徴的な運動障害を有する患者が日常生活を維持するためには、家族の理解やサポートが欠かせません。

心身両面からの支援を継続していくひとつの選択肢として、今後再生医療の治療が広く展開されることを望んでいます。

 

 

 

 

監修:医師 津田康史