「最近、どうも疲れが抜けない」「仕事や趣味へのやる気が昔ほど起きない」
40代を過ぎて、原因不明の倦怠感や気力の低下を感じている方もいるのではないでしょうか。こういった症状は、気力や年齢のせいだけではなく、男性更年期障害のサインかもしれません。
更年期は女性だけのもの、というイメージがありますが、男性にもホルモンの変化によって心身に同様の不調が現れることがあります。
この記事では、男性更年期の正体であるLOH症候群の症状から、女性の更年期との違い、治療法までを詳しく解説します。
目次
男性更年期とは?
男性更年期障害とは、主に加齢やストレスに伴って男性ホルモン(テストステロン)の値が低下することによって引き起こされる、さまざまな心身の症状の総称です。LOH(ロー)症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも呼ばれていますが、テストステロンが低下し始める時期や程度には個人差が大きいのが特徴です。
日本には頻度を調査した疫学研究はありません。しかし、テストステロンの値が低下している男性の割合は、40歳代で約10%、50歳代で約20%、60歳代では約50%にのぼると報告されています。LOH症候群と診断される方はこれより少ないものの、多くの男性にとって決して他人事ではないと言えます。
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」
男性更年期の症状
男性更年期の症状は、精神的なものから身体的なもの、性機能に関するものまで非常に多岐にわたります。また、複数の症状が同時に現れることも少なくありません。
| 部位 | 症状 |
|---|---|
| 精神神経症状 | 疲労感、憂うつ、さまざまな不安感、不眠、食欲低下、集中力の低下など |
| 身体症状 | 心血管系:のぼせ、ほてり、手足の冷え、動悸、発汗など 感覚器系:頭痛、めまい、耳鳴り、手足のしびれなど 運動器系:筋力低下、運動能力の低下など |
| 性機能症状 | 性欲の減退、勃起障害(ED)など |
男性には女性のように閉経というはっきりした節目がないため、ご自身でも更年期が原因の不調だと気づきにくい側面があります。
出典:藤田医科大学腎泌尿器外科「クローズアップされる男性更年期障害」
男性更年期と女性更年期の違い
男性更年期と女性更年期は、どちらも性ホルモンの低下が原因という点は共通していますが、現れ方には大きな違いがあります。
最も大きな違いは時期と期間です。女性は50歳前後の閉経を境にホルモンが急激に減少しますが、男性は時期が決まっておらず、40代以降いつまでも続く可能性があります。
| 男性更年期 | 女性更年期 | |
|---|---|---|
| 原因 | 男性ホルモンの低下 | 女性ホルモンの低下 |
| 時期 | 特に決まっていない(40歳代以降いつまでも) | 閉経の前後5年(50歳前後) |
| 期間 | 終わりがない | 閉経後5年ほどで症状は落ち着く |
終わりが明確でない点が男性更年期の特徴です。
出典:日本内分泌学会「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)」
LOH症候群の検査法と治療法
ここでは、LOH症候群の検査法と治療法について、説明します。
LOH症候群の検査法
気になる症状があれば、泌尿器科やメンズヘルスクリニックなどの専門医療機関に相談しましょう。診断は、主に医師による問診と、血液検査によるテストステロン値の測定によって行われます。
問診
医師が直接症状を伺うほか、より客観的に症状の程度を評価するために、専用の質問票が使われることがあります。代表的な質問票に、多くの言語に訳されているAging Males’ Symptoms(AMS)スコアがありますが、日本人向けに開発された質問紙もあります。
ただし、問診や質問票だけでLOH症候群と診断されることはありません。質問票はあくまで症状の重症度を把握したり、治療の効果を確認したりするために使われます。
テストステロン値の測定
血液検査では、体内で活性を持つ遊離テストステロン(FT)や総テストステロン(TT)などの値を測定し、総合的に判断します。LOH症候群は、FTのみが低下する場合と、FTとTTの両方が低下する場合があります。
テストステロン値が両方とも低いにもかかわらず、脳から分泌される黄体形成ホルモン(LH)が上昇していない場合は、肥満や2型糖尿病など他の要因が隠れていないか慎重に調べなくてはなりません。
LOH症候群の治療法
LOH症候群の治療は、症状に合わせて、生活習慣の改善や症状への対策、テストステロン補充療法が行われます。
生活習慣の改善
治療の基本は、生活習慣の見直しです。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけることで、症状が改善することがあります。生活習慣を見直しても改善しない場合は、体全体の活力を補う補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの漢方薬が処方されることもあります。
症状への対処策
個々の症状に対しては、お薬で対応することもあります。例えば、性機能の低下にはED治療薬、気分の落ち込みや不安が強い場合には抗うつ薬や抗不安薬、骨密度の低下が心配な場合は骨粗しょう症の治療薬などが使われます。
テストステロン補充療法
血液検査でテストステロンの値が明らかに低く、症状が重い場合には、減少したテストステロンを直接補うテストステロン補充療法が行われます。日本で保険適用になっているのは、テストステロン製剤の筋肉注射のみです。テストステロンの筋肉注射を2~4週間おきに、症状が改善するまで続けます。
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」
出典:日本内分泌学会「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)」
まとめ
40代以降に感じる男性の心身の不調は、単なる気力や年齢のせいではなく、テストステロンの減少という明確な医学的理由に基づいている可能性があります。女性の更年期のように、男性にも性ホルモンの変化と向き合う時期があるということです。
男性の更年期も適切な検査と治療をすれば、再び活力や自信を取り戻し、エネルギッシュな日々を送ることはできます。「ちょっと、変だな」と感じたら、一人で抱え込まず、専門医に相談してみましょう。
