筋断裂が起こりやすい動作や場所、筋断裂の予防・対処法について解説

いわゆる肉離れと言われる筋断裂ですが、運動をする方に多いとされています。また、競技により肉離れが起きやすい場所に特徴があります。普段のトレーニングから、筋断裂の予防を意識することにより、怪我をすることなく競技生活を続けることも可能になります。今回の記事では、筋断裂が起こりやすい動作や場所、筋断裂の予防・対処法について解説していきます。

 

筋断裂について

筋断裂は、いわゆる肉離れのことを指します。筋肉が切れてしまうことを指しますが、状態によりⅠ〜Ⅲ度までの重症度に分類されます。

 

筋断裂の分類

【Ⅰ度】

筋肉のわずかな損傷で、主に筋肉の太い部分(筋腹)の損傷が見られる状態です。

【Ⅱ度】

筋肉の部分的な断裂で、Ⅰ度よりも腱に近い部分での損傷が見られる状態です。競技復帰までには3〜6週程度の時間を要す場合があります。

【Ⅲ度】

筋肉の完全な断裂で、Ⅱ度よりもさらに腱に近い部分での損傷が見られる状態です。場合によっては手術が必要になることもあり、競技復帰までには数ヶ月の時間を要します。

 

 

筋断裂が起こりやすい動作

筋断裂は、筋肉が伸ばされた状態で強い力を発揮しなければならない時に生じるとされています。そのため、ジャンプの着地動作や、キック動作、ハードルを飛び越える動作などで発生しやすいとされています。

 

筋断裂が起こりやすい場所

競技ごとに動作の特性が違うため、筋断裂が起こりやすい場所は異なります。

筋断裂が起きやすい部位としては、ももの前や裏の筋肉(大腿四頭筋、ハムストリングス)や、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が代表的です。競技により、内ももの筋肉や胸、腕の筋肉に筋断裂が生じることもあります。

陸上競技やサッカーでは、ももの裏の筋肉やふくらはぎの筋肉の筋断裂が起きやすいとされています。

テニスでは、テニスレッグと言われている肉離れが起こる部位、ふくらはぎの内側の筋肉に筋断裂が生じる場合が多いです。

レスリングや柔道では、腕に筋断裂が生じる症例も報告されています。

このように、競技により様々な場所に筋断裂が生じます。

 

筋断裂の予防方法

筋断裂になりにくい特徴として、筋肉の十分な長さや柔軟性が言われています。サッカー選手を対象にした研究では、ももの裏の筋肉の長さが一定以下の選手は、十分に筋肉の長さがある選手に比べて筋断裂の発生リスクが4.1倍もあったという結果が報告されています。また、筋肉の長さが0.5cm伸びることにより筋断裂のリスクが約73%も低下したとも言われています。

そのため、日頃からストレッチをしっかりと行い、筋肉の長さを十分に保っておくことが必要なことがわかります。

筋断裂が起こる動作としては、筋肉が伸びた状態で強い力を発揮する時と言われています。つまり、日頃のトレーニングでも筋断裂が起きやすい場所に対して、筋肉を伸ばしつつ強い力を発揮するようなトレーニングが必要になります。専門用語では、遠心性収縮と呼ばれています。具体的には、重たいものを持ちながらゆっくりと下ろす動作や、階段をゆっくりと降りる動作などが代表的です。

日頃の筋トレや準備体操に加えて、各競技で使う筋肉を遠心性収縮で鍛えておきましょう。

 

 

筋断裂の対処方法

筋断裂に注意をしていたけど怪我をしてしまった方のために、対処方法をお伝えしておきます。

筋断裂の対処方法としては、RICE処置が基本となります。

 

RICE処置

RICE処置とは、怪我をしたときすぐに行ったようが良い対処方法の頭文字をとって、RICE処置と呼ばれています。

R:Rest(安静)

まずは患部を安静にします。筋断裂の場合は、痛めた筋肉を使わないようにするために、松葉杖を使用したり、痛めた腕を使わないようにしたりします。

I:Icing(アイシング)

筋断裂をしてすぐの状態では、筋肉の炎症が生じます。炎症を抑えるために、アイシングを行います。アイシングは、氷枕や氷嚢などでしっかりと患部の感覚がなくなるまで冷やしていきます。20分程度を目安とし、一度休憩します。2時間後くらいに患部をチェックし、まだ熱いようであれば再度20分程度、アイシングを行います。

C:Compression(圧迫)

アイシングをしつつ、患部を圧迫します。炎症や内出血を抑えることが目的です。テーピングや包帯などで圧迫を行って下さい。圧迫が強すぎる場合には、患部の血流が悪くなってしまい色が悪くなったり、感覚の障害や痺れなどが出てしまったりする場合があるので、圧迫が強くなりすぎないように注意してください。腫れが強くなる場合もあるため、定期的に患部の状態をチェックするようにしてください。

E:Elevation(挙上)

筋断裂をしてすぐの状態では、内出血が出たり、むくみが出たりします。これらを防ぐために、心臓よりも患部を高く持ち上げ、内出血やむくみが増えないようにしていきます。

 

まとめ

筋断裂について重症度の分類や、起こりやすい場所、予防・対処法について解説してきました。年齢を重ねるとともに筋肉も硬くなってきてしまうため、久々にスポーツをする場合には、特に入念にストレッチをする必要があります。もしも筋断裂を疑うような怪我をしてしまった場合には早めに医療機関を受診しましょう。ご自身の筋断裂がどの程度なのか、しっかりと確認をして、適切な対処をしていきましょう。

 

参考文献

・奥脇透 他:トップアスリートの肉離れ競技と受傷部位及びMRI分類について、日本臨床スポーツ医学会会誌、Vol.27 No.2, 2019、p192-194

https://www.rinspo.jp/journal/2010/files/27-2/192-194.pdf

・東原綾子 他:ハムストリングスの活動特性に基づいた肉離れ予防トレーニングの選択、日本アスレティックトレーニング学会誌 第3巻 第1号、p13-18、2017

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsatj/3/1/3_13/_pdf

 

監修:医師 津田康史