膝を曲げたときにポキポキと音が鳴る…。
音が鳴るほかに、痛みや腫れ、膝が伸ばしづらいといった症状がある方など、さまざまいらっしゃると思います。
こんなとき、そのまま様子を見ていい場合と、医療機関を受診した方がいい場合とがあります。ここでは膝を曲げたときにポキポキと鳴る原因と、注意するべき病気、対処法について説明します。
目次
膝がポキポキと鳴る原因
膝がポキポキと鳴る原因には、病気でないものと、病気によるものがあります。注意すべきなのは病気によるものです。
病気が原因でないもの
①加齢や運動不足によるもの1
膝は、太もも・膝・ふくらはぎの骨がつながる関節部分になり、これらの骨が直接こすりあわないように軟骨や関節液という液体がクッションとなり、滑らかな動きができています。
加齢や運動不足で膝の関節がゆがむと、関節液のなかに空気が入るようになり、膝を曲げたときにその空気がはじけてポキポキと音が鳴ります。
その後しばらくは、すぐに空気がたまる訳ではないので音も鳴りませんが、時間がたつとまたポキポキと鳴るようになります。
音が鳴る以外の症状がない場合は、様子をみていいことが多いです。
②急激な運動によるもの
前述した運動不足とは逆に、急激な運動で膝に圧力がかかった際にも、関節液に空気が入りはじけます。
その結果、ポキポキと音が鳴ります。この場合も、音が鳴る以外の症状がなければ、様子をみていいでしょう。
参考)
1 膝を曲げるとポキポキ鳴るのはどうして?3つの原因と治し方を紹介 (teru-saishin.com)
病気が原因のもの
①変形性膝関節症2
変形性膝関節症とは、老化による膝の軟骨・関節液の減少や肥満、遺伝により、膝の形が変形することを指します。骨折や半月板損傷の後遺症としてあらわれることもあります。
症状としては、膝を曲げるたびにポキポキと音が鳴る、痛みや腫れがある、歩きにくい、足がO脚となる、膝が伸ばせないなどがあります。
検査では炎症により関節液の増加(いわゆる「水が溜まる」)が認められます。
男女比では1:4と女性に多い傾向があります。
②膝蓋軟骨軟化症3
膝蓋軟骨軟化症とは、太ももの筋力低下や膝関節の柔軟性が低下することで、運動時などに、膝の骨(いわゆる「膝のお皿」)の裏側にある軟骨が変形したりつぶれることを指します。
症状としては、立ち上がる・歩く・走る・階段の上り下りなどの際に、膝周囲や膝の後ろ側に強い痛みがあります。性別や年代別においては、若年の女性ランナーやハイヒールを履く方に多い傾向があります。
参考)
2 「変形性膝関節症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる (joa.or.jp)
3 ランナー膝のひとつ(膝蓋軟骨軟化症)とは、その原因、症状と治療法 | リペアセルクリニック東京院 (fuelcells.org)
膝がポキポキと鳴るときの対処法
膝がポキポキと鳴るときの対処法としては、自分で行えるものと、医療機関で行うものがあります。
先に述べた病気が原因でないものは、まず自分で対処を試みてもいいでしょう。病気が原因のものは、自己流の対処は禁物で、医療機関で相談をしてください。
自分で行えるもの4
ポキポキと膝が鳴る以外の症状がないときは、筋肉トレーニングや適切な体重管理、膝を温めると有効です。膝の負担を減らすには、体重を支える部分を膝だけに集中させないことが大切です。
そのため、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えたり、肥満の場合は減量を心がけましょう。また、膝を温めると、血行不良でたまっていた疲労物質が解消されて音が鳴りにくくなることがあります。
医療機関で行うもの4
①薬による対処
変形性膝関節症と膝蓋軟骨軟化症のどちらでも選択される対処法です。
ポキポキと膝が鳴る以外に症状があっても痛みが軽い場合や、腫れや変形の少ない場合は、抗炎症薬や鎮痛薬で様子を見ることがあります。その種類には内服薬、湿布薬、座薬があります。
②ヒアルロン酸注入
変形性膝関節症の場合に選択される対処法です。
注射薬にヒアルロン酸の注入というものがあります。これは、関節液のもとになる一つがヒアルロン酸であることから、関節液が減っている場合に注入をして骨同士がこすりあわないよう人工的にクッションを作るものになります。
①②ともに注意点として、薬による対処は病気自体を治すものではありませんので、医師の指示のもと、筋肉トレーニングや適切な体重管理など、自身での対処もあわせて行っていくことになります。
③安静の確保
特に膝蓋軟骨軟化症の場合に選択される対処法です。
膝蓋軟骨軟化症の方の多くはスポーツが原因であることから、当面スポーツを中止し、膝の安静を確保しながら、筋肉トレーニングなどのリハビリを行います。
④手術による対処
変形性膝関節症の場合に選択される対処法です。
痛みや腫れ、変形があり、薬による対処法でもおさまらない場合や、すでに歩くことが難しいなど日常生活に大きく影響している場合は手術がすすめられます。
代表的な手術には、関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨骨切り手術、人工膝関節置換術があります。
軽度から中等度では関節鏡手術や高位脛骨骨切り手術が行われることが多く、重度の場合は人口膝関節置換術が適していると言われています。
参考)
4 変形性膝関節症に効く3つの治療法 – 運動療法・薬物療法・手術療法|膝の痛み|痛みwith (omron.co.jp)
まとめ
今回は、膝を曲げたときにポキポキと鳴る原因と、注意するべき病気、対処法についてお話ししました。
ポキポキと音が鳴るのみの場合は様子をみていいことが多いですが、痛みや腫れ、膝の伸ばしにくさなどが徐々に出てこないかを気にしておく必要があります。
すでに音が鳴る以外の症状が出ている場合は、早めに医師に相談することで病気の重症度がかわってくるため、医療機関を受診するようにしましょう。
監修:医師 津田康史