膝のヒアルロン酸注射が効かなくなったら?原因と対処法を紹介

膝の痛みでお悩みの方、ヒアルロン酸注射を受けても効果が感じられなくなってきていませんか?

ヒアルロン酸は関節の潤滑液としての役割だけでなく、炎症も落ち着かせたり軟骨の保護の効果も持つ非常に優れた成分です。もともと関節部に存在する成分なので、膝の痛みへの対処法として抵抗なく選択できるという方も多いでしょう。

 

ただ初めは効果を実感しても、時間とともにその効果が薄れていくことも少なくありません。「このまま注射を続けるべきか」「他に選択肢はないのか」と不安を感じている方も多いでしょう。

 

本記事では、ヒアルロン酸注射の効果が下がった場合の原因・また対処法について解説します。ヒアルロン酸を使ったアプローチを見直すタイミングや次のステップについても具体的にお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

ヒアルロン酸注射が効かなくなる原因

ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症などによる膝の痛みを和らげるために広く用いられている治療法です。しかし、時間の経過や回数を重ねるとともに効果が感じられなくなるケースもよくみられます。その理由について、いくつか詳しく見ていきましょう。

 

変形性膝関節症の進行

年月の経過により関節の状態が悪化すると、変形による骨や軟部組織への負担の方が強くなり、下記の炎症症状にも繋がりヒアルロン酸だけでは効果が得られにくくなることがあります。

 

炎症の増悪

ヒアルロン酸は、単に関節の潤滑剤としての役割だけでなく、抗炎症作用も持っていることが研究で明らかになっています。炎症を引き起こす細胞の働きを抑制したりする役割を果たすからです。しかしそれ以上に関節内の炎症が強くなると、ヒアルロン酸の効果が相対的に弱くなる場合があります。

炎症の度合いが強ければ強いほど、ヒアルロン酸だけでは痛みに対処しにくくなるということですね。

 

体重増加

体重が増えると膝への負担が大きくなり、体重が軽かった時期に比べて相対的に弱くなる可能性があります。

 

活動量の増加

過度な運動・仕事などで膝への負担が変化し、効果が感じられにくくなることがあります。

 

ヒアルロン酸に対する抗体ができる?

上記以外に、「薬をずっと使っていると効き目が悪くなるのと同じで、ヒアルロン酸に対しても耐性が出来るのでは?」という説も確かに存在します。

しかし、ヒアルロン酸はもともと人間の皮膚・眼・関節などありとあらゆる部位に自然に存在している成分であり、薬とは完全に別ものです。また、「長期的にヒアルロン酸を使うと耐性が出来る」という説に明確な根拠はありません。

 

膝の状態が悪くなっている、あるいは膝に過度な負担がかかるようになっていると考えたほうが自然でしょう。

 

ヒアルロン酸注射を見直すタイミング

効果が感じられなくなった場合、以下のような症状がみられるようになってきます。

 

痛みの再燃

以前はヒアルロン酸注射をすれば痛みが軽くなっていたのに、あまり痛みが軽くならないような感覚がある。あるいはほとんど効果を感じなくなった。

 

運動機能の低下

ヒアルロン酸注射をしても歩く距離や耐久性に良い効果をもたらさなくなってきた。歩行距離が短くなった、階段の上り下りが難しくなったなど、日常生活動作に支障が出てきた。

 

効果の持続時間が短くなる

「以前は注射を1回すれば1ヶ月効果が持続していたのが、1週間もすれば痛みが戻るようになった。」

 

これらの症状が見られる場合は、ヒアルロン酸注射の効果が低下している可能性があります。関節そのものの機能や筋力の程度、活動量の影響など要因はさまざまですが、膝の状態が悪化しているサインと考えたほうがよいでしょう。

当然、ヒアルロン酸治療を続けるか否かは医師の判断にもよりますので、個人のみで判断できるわけではありませんが「あまり効果が見られなくなってきた」「ヒアルロン酸注射を継続しようか悩んでいる」ということは必ず伝えておきましょう。

そもそも関節に注射を行うというのは感染など一定のリスクも伴います。痛みがほとんど減らないのに注射をずっとし続けるというのは、一時的な気休めにはなっても有用なこととは言えません。

 

実際の膝関節の状態や痛みの改善の程度、本人の訴えを総合的に判断して治療法を追加するか、あるいは別のアプローチ方法に変更するか、観血的治療(手術など)に進むかなど提案をしてもらえるはずです。

 

その他のアプローチ

以下の治療法はヒアルロン酸治療を継続して行い追加で別のアプローチも並行して行っていく・あるいはヒアルロン酸治療を中断して実施されるものです。

 

薬物療法

鎮痛剤や抗炎症薬を使っての治療です。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や外用薬の使用を検討・あるいは痛みの程度に合わせた鎮痛薬を処方されることがあります。

 

ステロイド注射

炎症が強い場合、短期的な効果を期待してステロイド注射を行うことがあります。

炎症を抑える力はヒアルロン酸よりも強いため、痛みが強い場合でも即時に効くパターンが多いです。

ただヒアルロン酸注射と同じで頻繁には出来ないことと、根本的な解決にはならないということを押さえておく必要があります。

 

リハビリテーション

入院しない場合でも、通院しながら外来リハビリテーションを受けられる場合があります。

外来リハを行っている機関では、リハビリテーションもアプローチとして選択されることがあるでしょう。

膝周囲の筋力強化や関節の動きを良くして痛みを軽減したり、物理療法(温熱・冷感療法や電気治療)を使って痛みの軽減を図ります。

 

手術(人工膝関節置換術)

膝関節の状態が悪く、上記のアプローチ方法でも運動機能の改善や痛みの軽減が難しいといった場合には、手術を勧められることがあります。

状態によって骨切り術などさまざまな手術法がありますが、多くは人工膝関節置換術が選択されるでしょう。

手術で人工膝関節にすると、狭くなっていた膝の隙間や骨の突起の部分(骨棘)も人工骨に置き換わるため、膝関節自体は整った状態になります。

 

デメリットとしては手術になるので入院が必要になり、手術による痛みにも一定期間耐える必要があります。リハビリテーションも続けなくてはならないため、仕事や家庭の都合で入院はなかなか出来ないといった場合には選択し難い治療法ともいえます。

そもそも既往などの影響で手術ができないといった場合も選択できません。

 

新しい治療法「再生医療」

再生医療は体の自然な修復能力を活用して、損傷した組織を修復・再生する革新的な治療法です。近年、新しい膝の治療法としても注目されています。

ヒアルロン酸は効きにくくなったけれど、このまま膝の悪化を待つだけというのも困る。ただ手術もしたくない・・・といった場合には、再生医療を選択するのも一つの手段として覚えておくとよいでしょう。

 

PRP(多血小板血漿)療法

血液から抽出した血小板を濃縮・成長因子を豊富に含んだ血漿を注入します。傷んだ部分を修復して、膝の痛みや炎症を抑える効果があります。

 

幹細胞療法

脂肪組織や骨髄から採取した「幹細胞」を用いて、軟骨や靭帯の再生を促します。

 

再生医療は、自分の血液や組織を利用して体の自然な修復メカニズムを活用します。自分由来の成分を使うことで、アレルギー反応などのリスクが低くて済みます。また入院や手術をせずに膝関節の治療が出来るのも大きなメリットです。

 

特に幹細胞療法には軟骨・靭帯の再生の効果があるため、手術以外に選択できる膝の根本的治療ともいえるでしょう。

 

まとめ

これらの代替の治療法は、それぞれメリットとデメリットがあります。最適な選択肢を専門機関と相談しながら決定していくことが重要です。

また、新しい治療法が常に研究・開発されています。膝の健康のために、最新の情報を得ながら膝のケアの幅を広げていきましょう。