【高齢者の脈拍の正常値はいくつ?】脈拍が変化する原因についても解説

脈拍の正常値はどれくらいの数字なんだろう?

脈が早い(遅い)気がするけど、大丈夫なのかな?

血圧の測定と合わせて出てくる脈拍の数値ですが、正常値はいくつか知っていますか?

脈拍は日常の生活、病気によって、変動がある数値です。

ご自身の正常値を把握しておくことで、身体の異常の早期発見、予防に繋がるのです。

 

今回は高齢者の方に向けて、脈拍の正常値について解説し、脈が早い時、遅い時に考えられる病気についても解説していきます。

 

高齢者の脈拍の正常値

高齢者の脈拍の正常値は、50〜60回/分とされています。しかし、国内での教科書等で統一的な書き方になっているものはなく、あくまでも基準値として捉えることが重要です。いわゆる「正常」な脈拍の数値は、個人によって差があります。また、抱えている病気や飲んでいる薬によっても脈拍の数値は簡単に変動してしまうため、普段の数値を把握しておくことが重要になります。

 

 

高齢者の脈拍が変動する要因

ここからは、高齢者の脈拍がどのような場面で、正常値から変動するのか解説していきます。

 

体温の上昇

体温が上昇することにより、脈拍数が上昇します。体温が上昇すると、血管が拡張します。すると、血圧が下がってしまうため、血圧の低下を防ぐために心拍数が上昇し、血圧を一定に保とうとする働きが見られます。

主に風邪や肺炎などによる発熱や、入浴時に体温が上昇し脈拍が正常値よりも増加します。

入浴と脈拍の関連性についての研究があります。60代〜80代の高齢者を対象に、入浴前後の脈拍数を調べた研究です。研究の結果としては、60代〜70代の高齢者では、入浴後に脈拍が増加したことが確認されていますが、80代の高齢者では入浴後も脈拍が増加しなかったとされています。

入浴場面において、高齢者が亡くなる事例があります。この研究から、80代以上の方は入浴時に血圧が低下した際、その代償としての脈拍の増加がないことが考えられ、血流量を一定に保つことが難しいことが考えられます。

 

大規模な出血

脈拍が上がる可能性として、大規模な出血も考えられます。多く出血してしまうことにより、循環する血液量が足りなくなり、血圧が低下します。血圧の低下を防ぐために、脈拍数を増加させ、なんとか血圧を保とうとします。

高齢になると、血液をサラサラにする薬を飲んでいたり、血小板が少なくなっていたりするため、出血が止まりにくい傾向があります。そのため、若い人に比べて出血も多くなりがちです。傷が大きくなくても出血がダラダラと長く続いてしまうと、貧血傾向になることもあるため注意が必要です。

 

心臓の機能低下

心臓自体の機能が低下しても、脈拍数が増加します。心臓は、血液を送り出すポンプの役割をしています。そのため、血液をうまく心臓内に溜め込んだり、溜め込んだ血液を排出できなかったりすると、脈拍1回あたりの心臓が送り出す血液量が低下します。このような状態では血圧が低下してしまうため、それを防ぐために脈拍数を増加させて対応します。

代表的な病気としては、「心筋梗塞」や「心不全」、「弁膜症」などが挙げられます。

 

心臓の電気信号がうまく伝わらない

心臓は、電気信号で動いています。心臓には「洞房結節どうぼうけっせつ」と「房室結節ぼうしつけっせつ」という、きちんと動くための信号を出す場所があり、その機能が低下してくると、脈拍が遅くなります。病気の名前としては、「洞不全症候群」や「房室ブロック」などが挙げられます。

これらの病気の場合は、ペースメーカーの埋め込みが必要になる場合があります。

病気以外にも、薬により脈拍が遅くなる可能性も考えられます。主にうつに対する薬や、心房細動に対する薬、血圧を下げる薬などで、脈が正常値よりも減少する可能性が考えられます。

また、特に、記憶力の衰えによる、薬の過剰摂取にも注意する必要があります。

 

脈が乱れる

脈が乱れる不整脈に関して解説します。高齢者でも脈拍が正常であれば、リズムが乱れることはありません。しかし、脈を打つタイミングでないのに脈を打ってしまったり、脈を打たなくてはいけないタイミングなのに脈を打たなかったりすると、不整脈が生じます。

最も危ない不整脈は心室細動と言われ、最悪の場合死に至る危険な不整脈です。

心室細動は、心臓が細かく震えることしかできず、しっかりと血液を全身に送り出すことができなくなってしまう状態のことを言います。このような状態が続いてしまうと、命に関わる危険な不整脈です。心室細動になると、手首で脈拍を触れることも難しくなってしまう事例もあります。高齢者の脈拍の正常値と比べて、大きく変化が見られます。AEDなどの除細動器を用いて電気ショックを行い、心室細動を除去しなければいけません。

不整脈は薬を用いることにより抑えることができたり、植え込み型の除細動器を用いたりすることにより、対処していきます。

 

 

まとめ:異常値であれば専門医に相談を

今回は、高齢者の脈拍の正常値と脈拍が変化する原因について解説してきました。

脈拍はいくつだから正常という考え方ではなく、様々な要素が関与するため個人によって差があります。普段の脈拍と比べてどのような変化があるのか、的確に捉えることが重要です。また、脈拍以外の要素も重要です。血圧や体温なども重要な指標になるため、脈拍と合わせてチェックしていく必要があります。

 

脈拍が正常値でないと突然死のリスクが上がるという統計データも出ておりますので、まずは早期受診のお勧めをします。

 

表参道ヘレネクリニックでは体に負担のかからない再生医療を得意としており、いきなり治療に踏み出せない方の為にも事前カウンセリングを実施しています。

脈拍の変動は、肥満、過度の飲酒、喫煙などの生活習慣にも関係しておりますが、生活習慣を改善をするのは一般的に難しいといわれています。

そこで自己幹細胞を活用する「再生医療」を用いれば、自身の細胞を使って体内の弱っている細胞を修復し、様々な疾患、合併症の予防改善が可能です。

「気にはなるけど、 本当に今から予防が必要か判断できない」 「治療するか決まっていないけど、 まずは話を聞いてみたい」 そんな場合も全く問題ありません。気付かないうちに生死をさまようリスクを抱えている場合もございますので、ぜひ一度お気軽にお問合せくださいませ。

・お問合せフォーム(メール対応):https://okusurinabi.com/contact/

【再生医療外来】 03-3400-2277

 

 

参考文献

・浅川康吉, 高橋龍太郎, and 遠藤文雄. “高齢者における浴槽入浴中の心・血管反応.” 理学療法科学 21.4 (2006): 433-436.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/21/4/21_4_433/_pdf

・和足孝之. “2. 臨床現場におけるバイタルサインの活用.” 日本内科学会雑誌 108.12 (2019): 2460-2466.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/12/108_2460/_pdf

 

監修:医師 津田康史