【医師監修】糖尿病のインスリン治療ってどんなもの? 

糖尿病になると内服治療やインスリン治療が行われます。インスリン治療とは、自分で自分の体に注射をする治療のことです。ここでは、インスリン治療について説明していきます。

 

インスリン治療になる適応

糖尿病の種類には、1型糖尿病と2型糖尿病があります。どちらも、血糖を血液中にあふれないようにするための「インスリン」というホルモンが通常のように分泌されなくなっています。

1型糖尿病とは、幼少期など若い頃から何らかの原因により、インスリンが分泌されなくなる方を指します。

2型糖尿病とは、食べすぎや運動不足といった生活習慣により、インスリンの分泌に支障が出ている方を指します。2型糖尿病の場合、インスリン分泌が減っているか、ほとんど分泌されない状態になっています。

これらにより、インスリンを人工的に投与する必要が出てきます。インスリン治療が適応になるのは、1型糖尿病の方と、2型糖尿病のうち、インスリンがほとんど分泌されない方になります。

内服治療よりも、糖尿病のコントロールがより必要になったときに行うのがインスリン治療です。患者さんによっては、インスリン治療と内服治療を併用することがあります。

参考)

薬で血糖値が下がるしくみ | 糖尿病情報センター (ncgm.go.jp)

 

 

インスリン治療の種類

インスリン注射は大きく分けて2種類あります。1つはGLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬というもの、もう1つはインスリン製剤というものです。

GLP-1受容体作動薬はインスリンを分泌しやすくするもので、2型糖尿病の方に使われます。

インスリン製剤はインスリンそのものを補うもので、1型糖尿病の方や、重度の2型糖尿病の方に使われます。

インスリン製剤には、さらに種類があります。代表的なものを挙げます。

 

超速攻型

食事の直前に打ち、約10分ほどで効果が出ます。効果が続く時間は3~4時間と短いです。

速攻型

食事の30分前に打ち、約30分~1時間ほどで効果が出ます。効果が続く時間は5~8時間と短めです。

中間型

食事のタイミングに関係なく、1日1回、決まった時間に打ちます。約30分~3時間で効果が出ます。効果が続く時間は18~24時間です。

持効型

食事のタイミングに関係なく、1日1回、決まった時間に打ちます。約1~2時間で効果が出ます。効果はおよそ1日続きます。

 

超速攻型や速攻型は、特に食後血糖値が高くなる方に対して使用され、中間型や持効型は、常にインスリン分泌が少ない方に使用されます。

いずれも、自分が何を使用するかは、検査の結果や、食事をはじめとした生活スタイルなどによって、医師の判断のもと決定されます。

参考)

血糖値を下げる注射薬 | 糖尿病情報センター (ncgm.go.jp)

 

 

インスリン注射の使用方法

インスリン注射は食事の前、または1日1回の実施が必要なため、自分で自分に注射することになります。あらかじめ看護師や薬剤師から指導がありますので、用法・用量通りに行いましょう。

  まず、手を洗います。

  インスリン注射本体、針、アルコール消毒綿を準備します。

  本体の蓋を外し、キャップからはずした針を接続します。

※本体と針の接続部分を消毒してから、針を接続します。

  空気を抜くために、空打ちをします。

本体のダイヤルをまわし2単位(単位:インスリン量の数え方)にセットします。その後、注入ボタンを0単位になるまで押し続けます。

  指示の用量単位分、ダイヤルをまわしセットします。

  自分の皮下を消毒します。

注射は皮下脂肪に行います。皮下脂肪とは自分でつまめる脂肪です。一般的な部位としてはお腹、それ以外にはお尻、肘上、太ももなどがあります。お腹は皮下脂肪をつまみやすく、かつ自分でよく見える部分のため、第一選択として選ばれます。

  本体を握り持ちして針を皮下に刺し、ダイヤルが0になるまで注入ボタンを押し続けます。10秒ほど刺したままにすると、確実に注入されます。

  針を抜き、本体から針を外してキャップをはめます。

※針は医療廃棄物となりますので、ひとつの袋にまとめるなどして、次回の外来や薬局で破棄してもらってください。生活ごみと混在して破棄してはいけません。

 

インスリン注射を続けるうえでのポイントとして、同じ箇所(例えばお腹)のなかでも少しずつ位置をずらしましょう。毎日のことですので、同じ箇所に打ち続けると、皮膚が固くなってしまうことがあります。その部分はインスリン注射の吸収が悪くなりますので注意しましょう。

参考)

血糖値を下げる注射薬 | 糖尿病情報センター (ncgm.go.jp)

 

 

インスリン注射をするうえでは低血糖に注意

低血糖とは、血糖値が下がりすぎてしまうことを言います。症状としては、汗をかく、ふらつきや手が震える、時には意識がなくなるなど命に関わるものもあります。

原因はいくつかあり、空腹の時間が長すぎた、炭水化物を極端に減らした、過度な運動をした、インスリン注射を打ったが食事量が少なかった、といったときに起こりやすいです。

また、健康診断や人間ドックで絶食をする際には、基本的には食事前のインスリン注射もなしになります。

これを忘れてインスリン注射だけ打ってしまうと低血糖の危険性が高まるので注意しましょう。

健康診断を受ける前には、インスリン注射を処方してもらっている医師に、打つかどうかの確認をして下さい。

また、低血糖のような症状が続く際にも、医師に相談をしましょう。インスリン注射の単位量を調節してもらう必要があるかもしれません。

 

 

まとめ

今回は、インスリン治療についてお話ししました。インスリン注射は、自分で行う医療行為になります。治療について自分でもよく理解し、正しい注射方法を身につけ、体調の変化がないかにも気を配りましょう。そして少しでも疑問や不安があれば、医師に相談しましょう。

糖尿病と上手に付き合いながら、より良い生活を目指しましょう。

 

 

監修:医師 津田康史