手足がしびれるときに疑われる病気は?

手足がしびれる原因には、一時的なものと病気によるものが存在します。

原因が直前にあるしびれ(例えば、手や足をしばらく圧迫していたなど)や、1~2日でおさまるしびれに関しては、病気でないことが多いでしょう。しびれがおさまらない、強くなるといった場合には病気が疑われます。

なかにはすぐに医師にかかったほうがよいものもあるため、放っておいてはいけません。ここでは、手足のしびれの原因になる病気について説明していきます。

 

 

手足のしびれで疑われる病気

手足がしびれる原因には、大きく分けて脳の病気、脊髄の病気、それ以外の病気の3つがあります。

 

脳の病気

脳は全身をつかさどる役割を持つため、病変(病気による変化)によりしびれを含めた運動障害が起きます。代表的なものに、脳梗塞、脳腫瘍、脳出血、脳挫傷、中枢性甲状腺機能低下症があります。

脳梗塞、脳腫瘍、脳出血、脳挫傷では通常、障害を受けた場所(右脳か左脳)の反対側の手足にしびれが生じます。顔の半分にも表れることがあります。

しびれが自然におさまることはありません。

 

中枢性甲状腺機能低下症では、脳の下垂体に何らかの異常があると、そこから分泌される甲状腺刺激ホルモン分泌が低下し、甲状腺から出るホルモン分泌も低下します。

 

甲状腺ホルモンは代謝に関わるため、分泌が低下すると手足がむくみやすくなります。

 

その結果、手や足の神経が圧迫され、しびれが生じます。手では「手根管症候群」があり、親指・人差し指・中指の全体、薬指の半分がしびれます。足では「前足根管症候群」があり、親指と人差し指の付け根がしびれます。手も足も通常、両側に起き、手足を酷使した際によりしびれが強くなる傾向があります。

 

以上で述べた病気は、いずれも緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診するか救急車を要請しましょう。

参考)

甲状腺と末梢神経障害;手根管症候群、深腓骨神経麻痺[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック大阪] (nagasaki-clinic.com)

 

 

脊髄の病気

 

脊髄は脳から手足への指令が通る神経のため、脊髄や、脊髄を取り囲む骨・靭帯の病変によりしびれが起きます。

代表的なものに、脊髄腫瘍や頚椎・腰椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症などがあります。

脊髄腫瘍では脊髄や、脊髄を取り囲む脊柱管に腫瘍ができるため、手足またはいずれかにしびれが起きます。しびれはおさまらないことが多いです。

 

頚椎・腰椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症では、脊髄を取り囲む椎間板や後縦靭帯、脊柱管が変形し、脊髄を圧迫することで手足またはいずれかにしびれが起きます。

姿勢によってしびれの出方が変わるのが特徴です。体を後ろに反らしたり、座っているときは脊髄を圧迫する姿勢となり、しびれが強くなります。逆に立っている時やまっすぐ前を向いている時には、圧迫が軽減されるため、しびれが軽くなります。

 

左右差に関しては、脊髄の病気全体において、圧迫されている脊髄の部位や程度によって、左右一方だけに出る場合と、左右どちらにも出る場合とがあります。

 

脊髄には排せつの指令を出す神経も通っているため、排せつにも支障をきたしている場合は、病気が進行している可能性があるほか、手術が必要なこともあります。すぐに医療機関を受診しましょう。

 

 

それ以外の病気

それ以外の病気では、末梢神経に影響する血管や代謝・免疫異常が原因でしびれが起きます。

代表的なものとして、糖尿病、副甲状腺機能低下症、胸郭出口症候群、閉塞性動脈硬化症、ギランバレー症候群などがあります。

 

糖尿病では、神経細胞の働きを阻害する物質が神経にたまるほか、「血がドロドロ状態」になり血流が悪くなることで手足の先まで酸素や栄養が行き届かなくなります。その結果、手足両側の指先からしびれを感じるようになります。

 

胸郭出口症候群では、腕を上げる動作が多かったり、なで肩の女性で、上肢につながる胸元から肩の血管や神経が長時間圧迫されることで、肘から先の小指側にしびれが起こります。しびれは左右一方だけに出る場合と、左右どちらにも出る場合とがあります。足のしびれはありません。

 

副甲状腺機能低下症では、甲状腺の手術時に副甲状腺も摘出または損傷することで、副甲状腺の働きであるカルシウム濃度の調整が滞り、手や口の周囲がしびれます。

 

閉塞性動脈硬化症では、下肢を通る血管の動脈硬化により、酸素や栄養が行き届かず足先からしびれが起こります。多くは両側でしびれを感じます。手のしびれはありません。

 

ギランバレー症候群では、ウイルス感染をきっかけに、自己免疫機能に異常が生じ、自分の神経を攻撃してしまうことで手足の先にしびれが起こります。

 

風邪や下痢をした1~2週間後に、突然、両側の手足のしびれや脱力感が起こり、時には顔の筋肉が動かせないといった症状を併発します。

以上で述べた各病気においては、緊急性が異なります。閉塞性動脈硬化症は進行すると下肢切断を余儀なくされる場合があります。またギランバレー症候群は、呼吸に関連する筋肉にまで影響が及ぶと命の危機があります。すぐに医療機関を受診するか救急車を要請しましょう。そのほかの病気でも、医師からの指示や治療を受け、しびれや元となる病気の悪化を防ぎましょう。

 

参考)

胸郭出口症候群ってどんな病気?~原因や症状、受診の目安とは~ | メディカルノート (medicalnote.jp)

急に左右対称に起きる手足の脱力としびれ – 兵庫県医師会 (med.or.jp)

 

まとめ

今回は、手足のしびれの原因になる病気についてお話しました。

それぞれの病気でしびれの部位や出方が異なります。いずれも、しびれや元となる病気の悪化を防ぐために医療機関を受診しましょう。緊急性のあるものは、なるべく早い時点で救急車を要請してください。

自分の体の変化にアンテナをはって、よりよい生涯を目指していきましょう。

 

 

監修:医師 津田康史