腱鞘炎とは?腱鞘炎の病態や特徴について解説

指や手首を動かす時に、痛みが出ることはありませんか?指や手首の痛みは、腱鞘炎が原因の場合があります。

腱鞘炎は、普段から指や手首を酷使してしまう人や、女性に多いとされています。令和の時代では、スマートフォンを利用する方がほとんどだと思いますが長時間利用して指が痛くなった経験などございませんでしょうか?

 

今回の記事では、腱鞘炎が起こる仕組みや対策、腱鞘炎の種類について解説していきます。

 

 

腱鞘炎とは

筋肉は、腱によって骨と繋がっています。この腱を摩擦から守るように、腱鞘という組織が包んでいます。

腱鞘炎とは、腱を包んでいる腱鞘が炎症を起こすことで、指や手首の動作時に痛みが出てしまう病態のことを言います。

腱鞘炎は、主に手首や指に症状が出やすく、使いすぎが原因と言われています。

 

腱鞘炎が軽度の場合は、塗り薬を塗ったり、手にかかる負担を軽くしたりすることにより症状が改善します。しかし、再発を繰り返したり、痛みがあるまま放置していたりすると症状が悪化し、ばね指と呼ばれる状態に移行していく可能性もあります。

近年では、スマホの操作が原因で親指に痛みが出てくる人も多くなっています。

腱鞘炎には、ばね指やドケルバン病と呼ばれる疾患も含まれます。それぞれの疾患について解説していきます。

 

ばね指

ばね指になってしまうと、指を曲げた状態から伸ばす時に引っかかりが起きてしまいます。自分の力だけでは、指を伸ばすことが困難になってしまったり、指を弾くように急激に伸びたりするような状態のことをばね指と言います。

ばね指には急激になるわけではなく、下記のような経過をたどることが考えられています。

 

ばね指になるまでの経過

  1. 指の使いすぎで腱や腱鞘に炎症が起こる。
  2. 一時的には症状が治るが、再発を繰り返す。
  3. 炎症が起きた部位が徐々に分厚くなってしまい、腱と腱鞘の隙間が小さくなる。
  4. 指を動かす時に引っかかりが起きるようになり、ばね指となる。

 

このように、腱と腱鞘の引っかかりが原因で、ばね指が生じます。

 

ドケルバン病

ドケルバン病は、手首付近の腱鞘炎です。主に、親指を伸ばしたり、大きく手を広げたりする時に使われる腱に、痛みが生じます。

近年では、スマホの操作が原因でドケルバン病になる方も増えています。

痛みが出る原因としては、他の指が腱鞘炎になる場合と一緒です。

親指の使いすぎが原因で、親指を伸ばす腱や腱鞘に炎症が生じ、手首や親指の動作時に痛みが出るようになります。

 

 

腱鞘炎になりやすい人の特徴

腱鞘炎になりやすい人は、指や手首を酷使する人です。文字や絵をよく書く人や、パソコンをよく使用する人、スポーツでラケットを使用する場合も腱鞘炎に注意する必要があります。

また、ホルモンの関係から女性の方が腱鞘炎になりやすいと言われています。エストロゲンの減少により、腱を痛めやすい状況になってしまうからです。

そのため、更年期の方や、妊娠、出産後の方は特に注意が必要と言われています。

 

さらに、糖尿病や関節リウマチなどの病気がある方も、腱鞘炎になりやすいとされています。これらの病気は、炎症が生じやすく炎症が軽減しにくいからです。

 

 

腱鞘炎を防ぐためには

パソコン作業を長時間行う人は、キーボードの角度や机・椅子の調整、クッションを使うなどして、手首や指に対する負担を減らすことが必要になります。

スポーツでは、フォームが原因で腱鞘炎になる可能性があります。手首に負担のかからないようなフォームを身につけることで、腱鞘炎を防げる可能性があります。

糖尿病やリウマチでも腱鞘炎になる可能性がでてくるため、これらの病気のコントロールをしっかりとしていく必要があります。症状が安定するように、生活習慣を見直したり、服薬を忘れたりしないようにしていきましょう。

 

 

腱鞘炎かなと思ったら

まずは、患部を安静にします。痛みが出ている部分を使わないようにして、炎症が軽くなってくるのを待ちます。

痛みがある部分が腫れていたり、熱を持っていたりしている場合は、氷などでアイシングを行います。

 

アイシングは20分程度を目安として行い、休憩します。2時間ほど経過しても熱が残っている場合は、再度アイシングを行います。

 

 

腱鞘炎の治療

 

まずは、安静にすることが必要になりますが、塗り薬を使用して、患部の炎症を軽くしていくこともあります。

また、負担がかかっている筋肉に対してストレッチを行うことも有効とされています。

ばね指の治療では、滑りが悪いところに注射をしたり、手術で腱鞘を一部開いたりすることがあります。

 

治療方針については、医療機関の担当者とよく相談をするようにしてください。

 

まとめ

今回の記事では、腱鞘炎の病態や特徴について解説してきました。

主に、指や手首の使いすぎが原因で生じる腱鞘炎ですが、負担がかかりすぎないように環境に配慮したり、ストレッチをしたりすることで予防も可能です。

 

また、腱鞘炎が疑われる場合は、安静とアイシングが必要になります。症状が長引く場合は、医療機関に早めに相談することが必要です。

スマホの使いすぎも腱鞘炎の原因の一つなので、休みながら使用するようにしてください。

 

参考文献

・西森美沙子 他:関節超音波像からみた屈筋腱腱鞘炎(ばね指)の病態的特徴、超音波検査技術、38巻(2013)1号、p13-20

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jss/38/1/38_13/_pdf/-char/ja

・上原浩介:狭窄性屈筋腱腱鞘炎に対するストレッチング、整形・災害外科 65巻4号(2022年4月)、p451-455

https://webview.isho.jp/journal/detail/pdf/10.18888/se.0000002100

・栗原修平 他:スマートフォンユーザーの母指操作特性に関する研究、2017年55Annual巻 5PM-Abstract号 p476 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/55Annual/5PM-Abstract/55Annual_476/_pdf/-char/ja

 

 

監修:医師 津田康史