健康長寿の実現には、生活習慣病を予防するための運動が必要不可欠です。
適度な運動は基礎体力の維持やストレス解消、免疫向上などに繋がり、老後の心身共に健やかな生活を支えます。
こちらの記事では、高齢者が運動に取り組むべき理由と生活習慣病やフレイルを予防する運動について解説します。高齢者またそのご家族の方は、ぜひ運動不足の解消にお役立てください。
目次
高齢者が運動に取り組むべき理由
高齢者がおこなう運動にはさまざまなメリットがあります。
・基礎体力の維持
加齢に伴い筋力が低下する現象を「サルコペニア」といいます。
筋力低下が進行すると、躓きやすくなり骨折や転倒のリスクが高まる他、歩く・立ち上がるといった動作が億劫になると、次第に活動能力までもが低下してしまいます。
そうならないためには、普段から積極的に体を動かし、筋力や骨密度の維持に努めることが大切です。
・ストレス解消
加齢と共に心身の活力が低下した状態を「フレイル」といい、この状態が続くと要介護状態になるリスクが高まるといわれています。
フレイルは体だけでなく心の働きが弱まっていることを指すことから、精神状態を安定させることの重要性が伺えます。
運動は血流を促進させて病気を予防するだけでなく、ストレス発散や精神安定にも効果的です。また体力や体型に自信がつくというメリットもあり、生活の質の向上にも役立ちます。
・認知機能低下の予防
脳と筋肉は互いに刺激をしあう関係にあり、運動は認知機能低下の予防に役立つことがわかっています。
また高齢者やアルツハイマー患者の脳では血流の低下がみられることから、身体を動かして血流を改善することが効果的だといわれています。
認知症予防に適した運動は、散歩やウォーキングなどの有酸素運動です。無理なくできる運動習慣を取り入れるよう心がけましょう。
・免疫力の向上
免疫力は10~20歳頃がピークで、年齢を重ねると共に低下していきます。
免疫力を維持するためにおすすめの運動法は、ウォーキングやジョギングです。心肺機能を高めることによる風邪や感染症の予防効果が期待できます。
・生活習慣病予防
加齢によって体の機能が低下してくると、糖尿病、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を引き起こしやすくなります。
適度な運動はこれらの疾患の予防・改善に役立つことがわかっており、血圧や血糖値、脂質代謝改善する効果が期待できます。
生活習慣病を予防する運動
生活習慣病の予防には、息が少し弾む程度の中強度の運動を習慣的におこなうのがよいとされています。
運動時間は1回30分以上、頻度は週2回以上が理想的です。年齢や身体能力に応じて体の状態に適した運動を取り入れましょう。
・ストレッチや体操
ストレッチや体操は、筋肉の柔軟性向上や関節の動きを改善する効果が期待できます。筋肉や関節を柔らかくしておくことは、転倒による骨折の予防につながります。
・散歩やウォーキング
散歩やウォーキングは筋力の低下を防ぎ、骨を丈夫にする他、リラックス効果が期待できます。近所を散歩することから始めて、慣れてきたら少しずつ距離を伸ばしていきましょう。
・体幹を鍛える
体幹トレーニングは体幹の筋力低下を防ぐことにより、姿勢や歩行能力、日常生活の動作を改善します。
・下肢の機能を維持する
高齢者になると下肢機能の衰えは特に目立つため、筋力を維持するための運動を積極的におこなう必要があります。歩く、または強い運動をするのが難しい場合は、椅子に座ったままできるトレーニングを取り入れるなどの工夫をしてみてください。
フレイル予防の運動
フレイルは、体重減少、疲れやすい、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下の5つの項目のうち、3項目が該当する状態を指します。
フレイルの原因の一つは運動不足といわれていますが、筋力トレーニングや有酸素運動、ストレッチをおこなうことにより、ある程度予防することが可能です。
楽ではないと感じる程度からややきついと感じる程度の運動が適しており、年齢や身体能力に合わせて実施することが望ましいとされています。
また、運動によって血流が改善されると、食欲増進や気分の安定などもみられます。
・有酸素運動(ウォーキング、ストレッチ、水泳、水中歩行)
肺機能を高めて、体力や持久力を向上させます。
・ストレッチング
筋肉の柔軟性を高めて、関節の動きを改善します。
・筋力トレーニング
筋肉量の減少や筋力低下を防ぎます。
・バランス訓練
バランス能力を高めて、歩行速度の低下や転倒を予防します。
高齢者運動まとめ
本記事では、高齢者の運動についてご紹介しました。
・運動は基礎代謝の維持やストレス解消、免疫力の向上に繋がる
・運動は認知機能の低下や生活習慣病を予防する
・生活習慣病には息が少し弾む程度の中強度の運動が効果的
・フレイルの予防には楽ではないと感じる程度~ややきついと感じる程度の運動が効果的
適度な運動を積極的に取り入れて、健康長寿を目指しましょう。
監修:医師 津田康史