「半月板損傷」という言葉をスポーツ選手などのケガで聞いたことはあるでしょうか。
半月板は膝の動きをスムーズにし、膝の関節において曲げ伸ばしなどのあらゆる動きで膝の関節を安定化させる役割があります。
さらに、運動を行った場合、ジャンプなど、強度の外的なストレス、物理的な衝撃をできるだけ分散させるクッションのような機能を果たす重要な役割があります。
そのため、半月板が損傷すると膝の痛みや膝が動かしにくい症状が現れます。
半月板を損傷した場合の治療として初期はまず安静にすること、そして損傷した部分にヒアルロン酸注射で治療を行うことが主流となっています。
半月板が断裂した程度が軽症であれば、サポーターなどの装具やテーピングなどの補助器具による補強、あるいは疼痛軽減を目的として鎮痛剤などの投薬治療や運動器によるリハビリテーションを実践します。
今回は半月板損傷に対するヒアルロン酸注射による治療の効果や限界点について解説していきます。
目次
ヒアルロン酸注射治療のメリット
ヒアルロン酸注射治療の主な効果とメリットは以下となります
・注射によって炎症を抑えて膝の動かしにくさ、膝の痛みや腫れを軽減する
・治療を短時間で受けることができる
・比較的早期に効果が実感できること
・注射なので全身に影響する副作用ができにくいこと
半月板損傷は、ジャンプをした際の着地や、ストップやターンを繰り返すような膝に大きく負担がかかる動作でバランスを崩した際などに起こりやすく、そんな場合、同時に側副靱帯や前十字靱帯などといった周囲組織の損傷を合併することもあります。
スポーツや運動などで半月板を損傷したケースの初期では、損傷した膝関節の患部の安静を保ち、関節部に注射を使って関節液を吸引、局所麻酔剤やヒアルロン酸注射による療法が主流となっています。
従来、抗炎症作用を狙って患部にステロイド注射を頻回に行っていた時代がありました。
このステロイドは魔法の薬と呼ばれ炎症を抑制できます。
特に、最近では半月板を損傷した後にヒアルロン酸ナトリウムを関節内に注入する注射療法が一定の効果を示すと考えられています。
実は、膝関節の軟骨の一成分でもあるヒアルロン酸物質は、水分が高いことが知られており、関節軟骨組織や半月板そのものが損傷した時に関節内部において潤滑油のような働きをします。
それにより膝が動かしやすくなり、関節痛や腫れの改善にもある程度の効果が期待できるようです。
半月板損傷でヒアルロン酸注射を行う場合には、軟骨の主成分であるヒアルロン酸物質を関節内に注射を用いて直接、注入することになります。
この注射治療は、まずは1週間に1回のペースで開始して5週程度連続して実施することが多く、次の段階では、間隔を少しずつ空けていき、約2週間に1回のペースで注射を5回~10回前後継続して行います。
これらの治療を施行しても関節の痛みが軽快しなければ、また元通り、週に1回にタイミングを調整しながら、概ね3か月程度様子を観察し、それでも著効しないケースでは根治的な手術治療を考慮することになります。
しかし、ヒアルロン酸注射に限界があります。
ヒアルロン酸注射治療のデメリット
ヒアルロン酸注射のデメリットは以下となります。
・ヒアルロン酸注射(治療)で得られる効果は短期的
・症状の改善効果は一時的となる
・長期に投与すると耐性が付き効果が薄れる
・痛みが薄れても軟骨が再生するわけではない(根本的解決にはならない)
ステロイドの薬は非常に効果を期待できますが、副作用にも注意が必要です。また、気を付けて欲しい点として、「ヒアルロン酸の注射で得られる効果はあくまで短期的」であり、必ずしも長期間に渡って改善効果が続かないというものです。
1回のヒアルロン酸注射で期待できる効果(持続期間)は、長く見積もってもせいぜい1~2週間程度と言われています。
ただ、長期間立て続けに繰り返しヒアルロン酸注射を実施した場合には、痛みを軽減する効果は徐々に減弱して、耐性が付いてくると効果も薄れてくることになります。
このことは、ヒアルロン酸自体が膝関節に悪影響を及ぼしているからではなく、注射によって一時的に症状が改善して痛みが緩和されることで日常生活において膝を酷使してしまい、関節機能を悪化させるといった原因が重なり、組織の損傷のスピードを助長させてしまうからです。
その他にも感染や神経損傷のリスクもあるため、ヒアルロン酸を継続的に打ち続けることはお勧めいたしません。
また、ヒアルロン酸を半月板損傷部に注射して、痛みが薄れても、その部分の軟骨が自動的に再生するわけではないことも知っておくべきです。
このようにヒアルロン酸注射はあくまで緊急的にその場をしのぐ対症療法であり、根本的な解決にならないことは十分に認識してください。
膝を損傷した時、ヒアルロン酸注射に迷っている方々、参考にしてみてください。
監修:医師 津田康史