厚生労働省の調べによると、成人男性の20%が高尿酸血症であるといわれる現代。
健診で尿酸値を指摘され、なんとなくそのままにしている方もいるのではないでしょうか。高尿酸血症は自覚症状に乏しく、知らぬ間にあなたの内臓が蝕まれている可能性も。
本記事では、高尿酸血症や痛風の原因や引き起こされる合併症、気になる治療法や予防についてご紹介します。
尿酸値が気になり始めた今が予防のスタートです。自分の尿酸値を把握して、日常生活で実践できる予防から始めましょう。
目次
1.痛風の原因にもなる高尿酸血症とは
高尿酸血症とは、尿酸の血中濃度が高い状態を指します。
尿酸は、食べ物や体内組織に含まれるプリン体が肝臓で代謝されてできる老廃物で、過剰に作られたり排泄が低下したりすると増加します。
厚生労働省によると、痛風の前段階である高尿酸血症は約1,100万人超と推定されています。女性ホルモンには腎臓からの尿酸を排泄する機能があるため、圧倒的に男性の罹患率が高い傾向にあります。
高尿酸血症は無症状のため、痛風による痛みがきっかけで発症に気づくケースも少なくありません。
以下では、尿酸値の数値目標などを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
2.高尿酸血症が悪化すると心配される病気
知らぬ間に進行する高尿酸血症は数年の時を経て、「尿酸塩沈着症」という激しい痛みや臓器障害などの合併症を引き起こします。
2−1.痛風
高尿酸血症が引き金となり、高頻度で発症するのが痛風です。
もっとも痛風発作が多く生じるのは足の親指の付け根部分といわれ、激痛によって腫れ上がるほか、靴を履くこともままなりません。
2−2.腎不全などの腎障害
高尿酸血症により生じた尿酸塩が、腎臓に沈着すると腎障害が起こります。
腎機能が低下すると、体は尿酸を体外に排泄できません。結果的には腎臓内に尿酸塩が蓄積するため、さらなる腎障害を招きます。
高尿酸血症の悪化は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を併発させるケースが多く、腎障害に拍車をかけることになります。
以下、日本腎臓学会でも詳しく解説しているので、さらに詳しく確認したい方はご確認ください。
2−3.尿路結石症
高尿酸血症により尿路(腎、尿管、膀胱、尿道)に結石が形成されると、尿路結石症を引き起こします。
尿路結石症は起き上がれなかったりのたうち回ったり、脇腹や背中に激痛を伴うのが特徴です。10mm以下の小さな尿路結石であれば、自然排出の可能性があるため、飲水や服薬で排出を待ちます。
排出しない結石は、体の外から衝撃波を当て結石を砕く方法と、内視鏡下での手術があります。結尿路結石の再発率は50%と高く、生活習慣の改善による再発予防が必要です。
以下、日本内分泌学会でも詳しく解説しているので、ご参照ください。
参照: 一般社団法人 日本内分泌学会
3.高尿酸血症と痛風の違い
高尿酸血症と痛風の大きな違いは、尿酸値が高い状態が続くのが「高尿酸血症」。高尿酸血症が慢性化すると、「痛風」を発症する点です。
高尿酸血症の進行は、以下の3期に分けられます。
- 無症候性高尿酸血症期:尿酸値が高いものの、痛風発作がない時期
- 痛風発作期:足の親指の付け根の関節に激しい痛みと腫れが出現
- 慢性結節性痛風期:症状が進行して関節炎などの症状が慢性化する
初期の高尿酸血症は無症状であり、治療の必要がありません。一方、痛風発作が現れた場合は、薬物療法が必須になります。
4.高尿酸血症や痛風になる原因と治療方法
高尿酸血症や痛風の原因は生活習慣の乱れであり、特に食生活が大きく関わっています。
以下、主な原因の一例です。
<原因>
- プリン体を多く含む食品の過剰摂取(魚卵・レバー・甲殻類に多い)
- 飲酒
- 食べ過ぎや肥満
- 激しい運動
<治療方法>
- 生活習慣の改善
- 痛風発作時は炎症や痛みを緩和する対症療法
- 尿酸の生成を抑える“尿酸生成抑制薬”と、尿酸の排泄を促す“尿酸排泄促進薬”
生活習慣の改善で尿酸値が下がらない場合は、薬物療法が必要です。血清尿酸値を急激に低下すると痛風発作が生じやすいため、尿酸降下薬を最小用量から開始します。
以下の臨床検査センターでは、ほかの治療法についても詳しく解説されています。
5.予防方法
生活習慣の改善や薬物療法により、尿酸値を正常値まで下げられると、痛風発作による痛みや腎障害などの合併症を予防できます。
<予防方法>
- プリン体を多く含むアルコールや食品の摂取を控える
ビールを毎日1缶飲む人では、6年間に血清尿酸値が0.5〜1.0mg/dl上昇するとの報告があります。休肝日を設けて肝臓を休める時間を積極的に作りましょう。
- 体重コントロール
痛風患者の60%に肥満があり、肥満度が大きいほど尿酸値は高くなる傾向があります。
- 積極的に水分を摂取する
水分摂取による尿量の増加で、尿酸の排泄を促します。甘い飲み物は尿酸値を上昇させるため、水かお茶を飲むようにしましょう。
6.まとめ:高尿酸血症と痛風は生活習慣がすべて
高尿酸血症や痛風は、生活習慣の改善や薬物療法により、尿酸値を安定させながら日常生活を送ることが可能です。
つまり、尿酸値の上昇を指摘された際は、日常生活を見直すチャンスでもあります。尿酸値を6mg/dl以下にコントロールすると、高尿酸血症や痛風だけでなく、肥満や糖尿病などの生活習慣病予防にもつながります。
自身の生活習慣を反映する数値ともいえる尿酸値。健康的な生活習慣の維持と、定期的な検査で健康状態を知る姿勢が、あなたの未来を変えるでしょう。ぜひ本記事を参考にして、痛みのない穏やかな生活を手に入れてください。
監修:医師 津田康史