メタボリックシンドロームと肥満症の違いについて

最近よく耳にするメタボリックシンドローム、通称メタボは、お腹を中心とした肥満のことをいいます。「お腹がぽこっと出ている」「リンゴ型の体形」と例えられることも多いです。

 

また、メタボリックシンドロームや肥満症は特に症状が現れず、そのまま放置するとさまざまな病気を引き起こします。

 

メタボリックシンドロームと肥満症、どちらも同じようですが、実は少し違います。

この記事では、メタボリックシンドロームと肥満症の違いや合併症、改善方法などについてまとめています。肥満症やメタボの予防をすることで、日々の生活の質が向上したり健康寿命が延ばすことができたりするので、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

1.メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満)とは

メタボリックシンドロームは内臓の周囲に脂肪がつき、動脈硬化を起こしやすい状態をいいます。

 

男性は腹囲が85cm以上、女性は90cm以上がメタボリックシンドロームといわれる1つの指標です。さらに、以下の2つ以上が該当すると、メタボリックシンドロームと診断されます。

 

  • 最大血圧が130mmHg以上かつ、または最小血圧が85mmHg以上
  • 空腹時血糖が110mg/dL以上
  • 中性脂肪(トリグリセライド)150mg/dL以上かつ、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dL未満

 

以下、一般社団法人日本生活習慣病予防協会では、BMI値なども説明されているので、併せてご参照ください。

参照:一般社団法人日本生活習慣病予防協会

 

 

 

2.メタボリックシンドロームと肥満症の違い

メタボリックシンドロームは肥満症に比べて「動脈硬化を起こす危険性が高い」のが特徴です。

 

肥満度を示すBMIは22が標準ですが、肥満症は25以上が診断基準です。さらに肥満による11種類の合併症が1つ以上該当する場合や、過剰な内臓脂肪の蓄積が確認された場合は、肥満症と診断されます。

 

また、BMIは肥満症を診断する重要な要素ですが、メタボリックシンドロームはBMIを重視しません。そのほか、内臓脂肪の過剰な蓄積は、動脈硬化を予防する善玉ホルモンの分泌を減らします。そのため、メタボリックシンドロームと診断された方は、動脈硬化を起こす確率が高くなります。

 

以下、一般財団法人 日本肥満学会では、肥満症の原因や注意点が記載されているので、併せてご確認ください。

参照:一般財団法人 日本肥満学会

 

 

 

3.メタボリックシンドロームや肥満症で注意すべき症状・合併症

メタボリックシンドロームと肥満症で注意が必要なのが、動脈硬化です。

動脈硬化をおこした血管は、もろく、血管内が詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞、大動脈瘤などの動脈硬化疾患につながるため注意が必要です。

 

 

3−1.高血圧症

高血圧は、塩分の摂りすぎが主な原因です。

しかし近年は、肥満や内臓脂肪の増加にともなう高血圧が、若年〜中年の男性を中心に増加しています。

 

血圧は本来、ホルモンや自律神経により正常に保たれています。一方、内臓脂肪の蓄積が増えると、血圧を上昇させる物質の分泌が増え、自律神経やホルモンバランスが乱れます。その結果、水分や塩分が体内に過剰に蓄積され、血管が必要以上に収縮し血圧が高くなるのです。

 

急激に血圧が高くなると、頭痛や吐き気を引き起こします。

血圧の高い状態が続くと、血管に負荷がかかり続けるため、次第に硬くなり動脈硬化を引き起こします。

 

以下、厚生労働省のe-ヘルスネットでは、高血圧の詳しい値についても解説されているので、気になる方は確認してみてください。

参照:厚生労働省:e-ヘルスネット「高血圧」

 

 

3−2.脂質異常症

メタボリックシンドロームや、肥満症による脂質異常症は、偏った食生活や油っこい食事が増えると進行します。

 

脂質異常症は体内の中性脂肪(トリグリセライド)や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増え、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減った状態です。

 

善玉コレステロールは、血管の壁に付着した悪玉コレステロールを取り除き、動脈硬化を予防します。しかし、悪玉コレステロールが増えると血液がドロドロになり、血管が詰まりやすくなるのです。

 

脂質異常症は、症状がありません。健康診断で発見されることが多く、指摘された場合は改善が必要なので注意しましょう。

 

 

3−3.糖尿病

メタボリックシンドロームや肥満症により内臓脂肪が蓄積されると、脂肪細胞からインスリンの働きを悪くする悪玉因子が分泌されます。

 

この状態が続くと、血糖値が上がって糖尿病になる危険性があるので注意が必要です。また、高血糖状態にさらされた血管は傷つけられ、簡単には戻りません。

 

糖尿病の合併症は全身のいたるところにダメージを与え、重症化すると心筋梗塞や失明、腎不全、傷が治らず足の切断にいたる方もいます。血糖コントロールが不良、肥満による減量が必要と医師が判断した場合は入院治療が必要になる場合もあります。

 

近年、糖尿病は認知症との関連性や、がんにかかるリスクが約20%も高くなると報告されているため、注意が必要です。

 

当メディアでも、過去に糖尿病についての詳細記事を掲載しました。糖尿病についての原因や対策を記載したので、気になる方はぜひご覧ください。そのほか、国立国際医療研究センターの「糖尿病とがんの関係性」も掲載します。

参照:HELENE:糖尿病になりやすい人の特徴

参照:国立国際医療研究センター「糖尿病とがんの関係性」

 

 

 

4.メタボリックシンドロームや肥満症になる原因

メタボリックシンドロームや肥満症の原因は、食べすぎや飲みすぎ、運動不足です。

 

仕事が忙しく、運動する時間がない人がいるように、運動不足は誰にでも起こりうる問題だといえるでしょう。仕事や家庭のストレスから、食べる量や飲酒量が増えるケースも少なくありません。

 

加齢による代謝機能の低下により、40代を過ぎると、お腹回りや体重が気になるという人が増えます。摂取カロリーが消費エネルギーを上回ると、内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積されます。肥満症などにならないために、摂取カロリーを減らして消費エネルギーを増やすことが大切です。

 

 

 

5.メタボリックシンドロームや肥満症は生活習慣を改善することで治療・予防につながる

メタボリックシンドロームや肥満症には、特効薬がありません。すべては、毎日の生活習慣が体に現れた状態なのです。

 

メタボリックシンドロームの原因となる内臓脂肪は、体に溜まりやすいため、運動などで体を動かすと解消する可能性があります。そのためメタボリックシンドロームだけでなく、肥満症も栄養バランスのとれた食事、運動、禁煙などを実践することで改善がみられます。

 

<予防方法>

  • 油っこいものを控え、野菜や海藻の多い食事を取り入れる
  • 日々の生活に運動を取り入れるために万歩計などを活用し、歩く距離を意識する
  • 煙草の本数を減らす、禁煙する
  • 飲酒量を減らす

 

以下、公益財団法人 長寿科学進行財団でもメタボリックシンドロームについての詳細が説明されています。

参照:公益財団法人 長寿科学振興財団「メタボリックシンドロームの改善」

 

 

 

6.まとめ:メタボリックシンドロームや肥満症は生活習慣を見直すことで対策できます

メタボリックシンドロームや肥満は、どちらも放置すると高血圧や脂質異常症、糖尿病を引き起こし、全身の血管に大きなダメージを与えます。

 

メタボリックシンドロームや肥満症を病気じゃないからといって放置せず、改善する対策が必要です。働き世代は毎日の仕事や生活が忙しく、自分の生活をおろそかにしがちです。今の自分の体は、日々の生活習慣を表しています。

 

メタボリックシンドロームや肥満症と指摘されたら、まず自分の生活を振り返り、なにが問題なのか知ることが大切です。規則正しい食事、運動習慣を取り入れて健康的な生活を目指しましょう。

 

 

監修:医師 津田康史