「ジムに通う時間も気力もお金もない」という方へ、いいお知らせです。血圧ケアのためのトレーニングは、ボディービルダーのような筋肉を目指す必要はありません。大切なのは筋肉を増やすことよりも「今よりも減らさない」ことです。筋肉量を維持するだけで、血圧を安定させる大きな効果が期待できます。
この記事では、通勤やデスクワークの合間にできる、頑張らない筋肉メンテナンスの方法を紹介します。
目次
筋肉を維持するだけで血圧が安定する理由
なぜ筋肉の維持が血圧に効くのでしょうか。
2010年に日本人を対象とした研究では、男女ともに加齢に伴い全身の筋肉量が減少することが分かりました。筋肉が減ると基礎代謝や体温が低下しますが、体は脳や心臓など重要な臓器の温度を保とうとして、皮膚表面の血管を収縮させて熱が逃げるのを防ぎます。この血管の収縮が、結果として血圧上昇を招くのです。
また、最近、ヨーロッパの研究では、骨格筋量は高血圧と逆相関しており、特に女性においてその傾向が顕著だったと報告しています。つまり、何らかの方法で筋肉を維持すると、血圧を安定させられるということです。
実際、運動は肥満者の糖の取り込みを増加し、インスリン抵抗性を改善する有力な方法となっています。つまり、筋肉を維持しようとすることは、薬に頼らないで血圧を安定させるのです。
参照:Effect of physical training on insulin action in obesity
通勤・デスクワークでできる「ながら筋維持」
運動と聞くとスポーツを思い浮かべますが、エネルギー消費は「意図的な運動(exercise activity thermogenesis, EAT)」と「非運動性身体活動(Non-Exercise Activity Thermogenesis, NEAT)」の2つに分けられます。身体活動によるエネルギー消費の90%以上はNEAT(ニート)が占めています。
つまり、ジムに行かなくても、座り方や歩き方を少し変えるだけで、筋肉維持には十分な効果があるのです。
参照:メソッド1.デスクの下で「ヒラメ筋」刺激
デスクワーク中に誰にも知られずにできるケアです。椅子に座ったまま、かかとを最大限上げ下げしてください。ふくらはぎの奥にあるヒラメ筋は、持久力のある遅筋繊維が多く、糖や脂質の代謝に優れている筋肉です。ここを動かすことで、座ったままでも代謝スイッチを入れられます。 ドローインという呼吸方法を覚え、エレベーターや信号待ちの時間にしてみましょう。 ドローインは、まず、背筋を伸ばして肩の力を抜き、鼻から息を吸ってお腹を膨らませます。次に口をすぼめてゆっくりと息を吐きながら、お腹を背中の方へぐっとへこませていきます。ポイントは、おへそを背中にくっつけるイメージで息を吐ききり、へこませた状態をキープしながら呼吸を続けることです。きつい筋トレのように血圧を急上昇させる心配がなく、体の深層にある天然のコルセット「腹横筋」が鍛えられ、腰痛予防や正しい姿勢の維持に役立ちます。 参照:日本血液製剤機構|Training 19体幹を鍛えよう1 -ドローインの練習- 駅やオフィスで階段を見つけたら、チャンスです。スポーツ庁が公開している運動強度(METs)の目安によると、通常の歩行が3.0メッツであるのに対し、階段を上る動作は、ゆっくりであっても4.0メッツ、速いと8.8メッツとされています。 わざわざ着替えて激しい運動をしなくても、移動手段をエスカレーターから階段に変えるだけで、運動強度は確実にアップします。毎日の通勤時間をトレーニングの時間に変える、無料のジムとして活用しましょう。 参照:厚生労働省|成人版「アクティブガイド―健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023-」 参照:スポーツ庁Web広報マガジン|「運動強度(METs)」で見る、効果的な身体活動は? 運動と同じくらい重要なのが食事です。筋肉を守るためには、「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」というタイミングの戦略が欠かせません。 加齢とともに、筋肉を作る反応は鈍くなります(同化抵抗性)。そのため、40代以降の方は若年層よりも質の高い必須アミノ酸を積極的に摂る必要があります。特に重要なのが必須アミノ酸の一種ロイシンです。研究によると、ロイシンの配合割合が低い(26%)と高齢者では筋合成が進みませんが、高配合(41%)であれば若年者と同等に筋肉が作られることが分かっています。マグロの赤身、鶏むね肉、卵、乳製品など、ロイシンが豊富と言われている食材を意識して選びましょう。 「朝はコーヒーだけ」という方は要注意です。2021年の研究で、朝食でのタンパク質摂取が筋肉量の増加に効果的であることが報告されています。睡眠中、体は絶食状態にありアミノ酸濃度が低下、夕食でたくさん食べても、翌朝には枯渇しています。 朝にタンパク質(卵や納豆など)を補給しないと、体は自分の筋肉を分解してエネルギーを作り出してしまうので、筋肉の目減りを防ぐため、朝こそタンパク質が必要です。 参照:早稲田大学|Topic「タンパク質摂取時間と筋量増加の関係」 「1日1回の階段」や「朝食の卵1個の追加」は小さな変化ですが、1年続ければ将来の健康を守る大きな筋肉資産になります。特別なトレーニングは不要です。今の生活の中に、少しだけ筋肉への気遣いを加えてみてください。 もし「関節痛で動けない」「どうしても筋力が落ちる」という場合は、再生医療の力で細胞レベルから活性化させる選択肢もありますので、検討してみてはいかがでしょうか。メソッド2. エレベーター待ちの「ドローイン」
メソッド3. 階段は「無料のジム」
食事で筋肉を守る|何をいつ食べるか
タンパク質と「ロイシン」
朝食時に食べる
まとめ
