お尻から足先にかけて走る、電気が走ったような鋭い痛みやしびれといった症状に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。坐骨神経痛という言葉を耳にしたことはあっても、坐骨神経痛が病名ではないことは意外と知られていません。坐骨神経痛の痛みは、体からの助けを求めるサインです。
この記事では、痛みの正体である原因疾患の見分け方や、自宅でできるストレッチ、痛みを根本から断つための治療法まで詳しく解説します。
目次
坐骨神経痛とは?原因となる疾患
坐骨神経痛という言葉はよく耳にしますが、病名ではなく、頭痛や腹痛と同じ症状の名前です。坐骨神経痛は、腰から足先まで伸びる人体で最も太い神経が、どこかで圧迫されることで起こります。
坐骨神経痛とは
坐骨神経は、手の指ほどの太さがある、体内で最も太く長い末梢神経です。体の左右それぞれの脊椎の下部から出て、お尻(股関節の後ろ)を通り、太ももの裏側、ふくらはぎへと足先まで続いています。長い坐骨神経のどこかの部分で圧迫や障害が生じると、痛みやしびれが発生します。これが坐骨神経痛です。つまり、坐骨神経痛は病気の名前ではなく、頭痛や腹痛と同じように症状の名前です。
出典:日本整形外科学会|整形外科シリーズ「坐骨神経痛」
出典:日本臨床整形外科学会|坐骨神経痛
出典:日本ペインクリニック学会|治療指針5版「下肢の疾患・痛み」
坐骨神経痛の原因になり得る疾患
坐骨神経痛の原因となる病気はたくさんありますが、数が多いのは腰椎の部分です。障害される神経の部分ごとに分けて、原因となる病気について、説明します。
腰椎部分
腰の骨(腰椎)周辺のトラブルが原因となるのは、以下の疾患です。
- 腰椎椎間板ヘルニア: 腰椎の骨と骨の間にある椎間板というクッションの外側がほころび、中にある髄核(ずいかく)が飛び出して神経根を圧迫する
- 腰椎分離すべり症: 若い頃の激しいスポーツなどが原因で脊椎後方の骨が分離し、そこにできた骨や組織が神経を圧迫する
- 腰部脊柱管狭窄症: 加齢により、骨や靭帯が分厚くなることで神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経根や馬尾神経を締め付ける
加齢による骨の変形や、過去の激しい運動などの影響が蓄積過去の激しい運動などが溜まって発症することが多く、中高年の方において坐骨神経痛を引き起こす代表的な原因となっています。
坐骨神経部分
腰椎(背骨)から出た後の、お尻や太もも周辺の神経の通り道でトラブルが起きているパターンです。
- 梨状筋症候群: お尻にある梨状筋(りじょうきん)という筋肉が硬くなり、その下を通る坐骨神経を圧迫する
- 帯状疱疹: ウイルスによって坐骨神経が侵され、強い痛みが生じた後に発疹が出る
腰の骨そのものには異常が見当たらない場合、ここを疑います。
神経に障害がない
神経そのものに異常がなくても痛みが出ることがあります。変形性股関節症などの関連痛として似た痛みが出る場合や、糖尿病性神経障害、あるいは原因が特定できないケースもあります。
すぐに医療機関を受診すべき症状と放置できない理由
坐骨神経痛を「ただの痛み」と軽視して放置するのは、禁物です。中には、急速に神経障害が進行し、手遅れになると一生麻痺が残ってしまう危険なケースもあります。
すぐに医療機関を受診すべき症状
痛みだけではなく、以下のような症状はありませんか。
- 筋力低下の症状:「スリッパが脱げやすい」「何もないところでつまずく」といった症状は、足首や指を持ち上げる力が弱まる「下垂足(かすいそく)」の可能性あり
- 膀胱直腸障害(馬尾症候群)の疑い:「お尻を拭く感覚が鈍い」「尿が出にくい・漏れる」といった症状は、緊急手術が必要になることもある重篤な状態
- 重度の感覚障害:「触っても感覚がない」「皮膚の温度が分からない」
筋力低下や感覚麻痺のサインがある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
放置できない理由
神経細胞は、完全に壊死してしまうと、現代の医療技術でも元に戻すことは困難です(不可逆的変化)。「痛いだけなら我慢すればいい」と放置している間に、神経への圧迫が進行し、一生消えない麻痺が残ってしまうリスクがあります。手遅れになる前に、専門医による診断を受けることが重要です。
痛みを和らげるためのストレッチと生活習慣
ここでは、自宅でもできる痛みを和らげるためのストレッチと生活習慣について、説明します。
ストレッチ(オフィスや自宅で)
お尻の筋肉(梨状筋)をほぐすことで、神経への圧迫を緩和できる場合があります。
【椅子に座ったままできるストレッチ】
- 椅子に浅く座り、痛みがある側の足首を、反対側の膝の上に乗せる(足で「4の字」を作る形)
- 背筋を伸ばしたまま、上半身をゆっくりと前へ倒す
- お尻の奥が「痛気持ちいい」と感じるところで20〜30秒キープ
呼吸を止めず、脱力することがポイントです。
一方、寝ながらできるストレッチもあります。
【寝ながら行うストレッチ】
- 仰向けになり、両膝を立てる。
- 片方の足首を、もう片方の膝に乗せる
- 下になっている足の太ももを両手で抱え、胸の方へぐーっと引き寄せる。
お尻の筋肉が伸びているのを感じながらキープしましょう。
冷やすべきか?温めるべきか?|急性期と慢性期の違い
冷やすべきか、温めるべきかは、痛みの激しい急性期と落ち着いてきた慢性期とで異なります。
急性期(痛みが起きてすぐ〜数日)には、冷やしましょう。激しい痛みがあり、患部が熱を持っている場合は炎症が起きています。この時期に入浴などで温めすぎると、炎症が広がり痛みが悪化する恐れがあります。氷嚢や冷湿布で冷やし、炎症を鎮めるのが正解です。
慢性期(痛みが落ち着いてきた〜長引く痛み)には、温めましょう。強い痛みのピークが過ぎ、鈍い痛みや重だるさが続く時期は、血流が悪くなっていることが痛みの原因の一つです。入浴やカイロ、温湿布で患部を温め、血行を促進することで筋肉の緊張がほぐれ、痛みが和らぎます。
坐骨神経痛の治療方法|痛みの根本原因を治すために
保存療法で自然治癒を待つのも一つの方法ですが、長期間改善しない場合は、痛み止めを使うのではなく、原因疾患(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など)への直接的なアプローチを検討する必要があります。
対症療法(痛み止め)
一般的に処方される痛み止め薬やブロック注射は、痛みの伝達を遮断したり、炎症を一時的に抑えたりする対症療法です。根本的な原因を取り除くわけではありません。
組織修復能力を活用した根本治療|再生医療
近年、手術以外の選択肢として注目されているのが再生医療(自由診療)です。再生医療では、自分自身の脂肪や血液から採取した幹細胞や成分を、患部である傷んだ椎間板や神経周辺に直接投与します。幹細胞が放出するサイトカイン(成長因子)が、慢性化した神経の炎症を鎮め、損傷した組織の修復を促す効果が期待できます。入院不要で体への負担が少ないため、多忙な方にも選ばれている治療方法です。
まとめ
坐骨神経痛と一口に言っても原因はさまざまであり、正しい鑑別診断が不可欠です。根本治療には手術が必要と聞くと、「仕事が休めない」「メスを入れるのは怖い」「再発が心配」と躊躇してしまう方も少なくありません。しかし、現在は再生医療という新しい選択肢も登場しています。マッサージや整体で一時的に痛みをしのいでいる方は、一度医療機関で原因を特定し、将来を見据えた根本治療を検討してみてはいかがでしょうか。
