「たっぷり寝たはずなのに疲れが取れない」「週末も体が重くて動けない」……40〜60代の働き盛りを悩ませる慢性疲労の正体は、年齢のせいだけではないかもしれません。このような慢性的な疲れには、血糖値の乱れによるエネルギー不足が関与している可能性があります。
この記事では、なぜ高血糖が重い疲労感を招くのか、ミトコンドリアの働きから詳しく解説します。
目次
食べても疲れる理由とは
食事をとって休養しても体がだるい原因は、食べたものが体内でうまくエネルギーに変換されていないことにあります。細胞レベルで何が起きているのかを見ていきましょう。
インスリンの働き低下とエネルギー不足
食事で糖質を摂っても、インスリンの働きが悪い「インスリン抵抗性」の状態だと、血液中の糖が細胞の中へスムーズに取り込まれません。そのため、高血糖であるにもかかわらず、細胞内はエネルギー源が不足した状態に陥るのです。つまり、食べているにもかかわらず、エネルギーが十分に作れない状態が生じているのです。
出典:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「睡眠と生活習慣病との深い関係」
脳と筋肉が疲労を起こすメカニズム
人間の体で最もエネルギーを消費するのは、脳と筋肉の2つです。糖がうまく取り込めないと、筋肉は動くためのエネルギーを失い、深刻なだるさや重さを引き起こします。さらに、脳へのエネルギー供給も滞るため、集中力の低下や日中の強い眠気といった症状も現れるでしょう。これが、休んでも抜けない疲労の正体です。
特に責任ある立場となる40〜60代にとって、会議中の猛烈な眠気や、休日に趣味へ出かける気力すら湧かない状態は、仕事のパフォーマンスや生活の質に影響を与える可能性があります。加齢によるスタミナ不足と自己判断してカフェインや栄養ドリンクに頼り続けると、根本的な糖代謝の異常を見逃す危険性が潜んでいるのです。疲労のメカニズムを正しく知ることが、解決への第一歩と言えるでしょう。
ミトコンドリアの機能低下と高血糖の悪循環
疲労感の原因を探るうえで欠かせないのが、細胞内にあるミトコンドリアの存在です。高血糖がこの器官にどのようなダメージを与えるのか解説します。
細胞内のミトコンドリアの役割
私たちの細胞の中には、取り込んだ糖や脂肪を燃やし、ATP(アデノシン三リン酸)という生命活動のエネルギーを作り出すミトコンドリアが存在しています。しかし、ミトコンドリアには加齢によって機能障害を生じやすい特徴があります。若い頃は食べたものを効率よくエネルギーに変換できても、加齢とともにそうはいかなくなってしまうのです。
出典:糖尿病 51(4):295∼297, 2008|ミトコンドリアにおける加齢変化と糖代謝
酸化ストレスによるミトコンドリア機能障害
血糖値が高い状態が続くと、細胞内で活性酸素が発生し、強い酸化ストレスを生み出します。この酸化ストレスはミトコンドリアの機能を低下させ、さらには形態異常まで引き起こすのです。その結果、ATPが作れなくなり、さらに疲れやすい体になるという悪循環に陥ります。こうしたミトコンドリアの機能異常が、2型糖尿病の発症に関与する可能性があるとも考えられています。
出典:東京女子医科大学学術リポジトリ|糖尿病とミトコンドリア機能
とれない疲労をケアする方法と再生医療
ミトコンドリアを健康に保ち、重い疲労を解消するためには、どのような対策が必要なのでしょうか。日常のケアと最新医療の両面からご紹介します。
日常でできるミトコンドリア活性化ケア
ミトコンドリアを元気に保つには、日々の血糖値コントロールが大切です。2型糖尿病の場合、エネルギー制限や短期的な炭水化物制限、低GI食、積極的な食物繊維の摂取が有効とされています。また、抗酸化作用に優れたビタミンCやお茶のポリフェノール類を摂ることも良いでしょう。適度なウォーキングなどの有酸素運動は、抗酸化酵素を誘導しインスリン感受性を高める健康増進効果が期待できます。
出典:糖尿病診療ガイドライン2024|3章 食事療法
Defective biosynthesis of ascorbic acid in Sod1-deficient mice results in lethal damage to lung tissue
新潟県立看護大|活性酸素を消去する抗酸化物質であるお茶類の抗酸化能比較
糖尿病診療ガイドライン2024|4章 運動療法
IRYO Vol.69No.7|運動と酸化ストレス―活性酸素と抗酸化防御のバランスの重要性―
細胞を若返らせる再生医療でのアプローチ
慢性的な疲労への新たなアプローチとして、細胞機能への作用が期待される再生医療や次世代のエイジングケアが注目を集めています。幹細胞治療や、そこから分泌されるエクソソームを用いた治療は、傷ついた細胞の修復や、全身の抗炎症・抗酸化作用の向上が期待されている分野です。さらに近年では、ミトコンドリア移植などの方法を研究しているグループも存在します。
これまで「年だから仕方ない」と諦めるしかなかった疲労感に対して、自身の細胞が持つ修復力を引き出す再生医療は、新しい希望の光となるでしょう。日々の食事や運動といったセルフケアだけでは限界を感じている方は、こういった科学的アプローチを取り入れることで、活力ある日常を取り戻せる可能性があります。専門のクリニックへ相談してみるのも良いでしょう。
出典:徳島大学研究クラスター|【終了】ミトコンドリア移植による加齢性病態、組織損傷、および治療抵抗性腫瘍に対する新規治療法の開発
まとめ
抜けない疲れやだるさは、血糖値の異常と細胞のエネルギー不足を知らせる体からのSOSサインです。放置すれば糖尿病だけでなく、全身の老化に影響を与える可能性があるため、早めの生活習慣改善が必須となります。マッサージや栄養ドリンクでどうにもできない疲労には、細胞レベルから働きかける再生医療も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
