健康診断の結果を見るたびに、年々数値が悪化していることにため息をついていませんか?
「年齢のせいだから仕方ない」と諦めるのは、早過ぎます。高血圧や高血糖は、老化によるものではなく、運動不足を伝える体からのSOSかもしれません。
この記事では、放置すると怖い病気の連鎖「メタボリックドミノ」と、ドミノを食い止めるための筋肉の重要性について解説します。
目次
負の連鎖「メタボリックドミノ」の始まりは筋肉不足
高血圧は、単独で起きるものではありません。医学界には、メタボリックドミノという概念があります。メタボリックドミノは、慶應義塾大学の伊藤裕教授らが2003年に世界で初めて提唱した概念です。生活習慣の乱れから始まり、肥満、インスリン抵抗性、高血圧・高血糖、そして動脈硬化や心不全へと、ドミノ倒しのように病気が連鎖して重症化する様子を表しています。その2年後に、今では一般的になった「メタボリックシンドローム」の診断基準ができました。
メタボリックドミノの最初の1枚を倒してしまう大きな要因は、筋肉量の減少です。筋肉量が減ると基礎代謝が落ち、体温が低下しやすくなります。体は熱を逃がさないように皮膚表面の血管を収縮させるため、結果として血圧が上昇してしまうのです。つまり、筋肉を維持することは、メタボリックドミノを食い止めるストッパーになるのです。
参照:慶應義塾大学医学部・医学研究科|特集記事「メタボのドミノを食い止めろ「全身を診る内科」の挑戦」
見た目は細くても筋肉が脂肪に?隠れ肥満に注意!
「自分は太っていないから関係ない」と思っている方ほど注意が必要です。加齢に伴い筋肉量が減少することをサルコペニアと呼びますが、サルコペニアに肥満が合併した状態を「サルコペニア肥満」と呼びます。体重計の数値が変わらなくても、筋肉が減り、代わりに脂肪が増えている場合、血管への負担は静かに進行しています。40代以降は体重計の数値だけで安心するのは禁物です。
脂肪が増えると良くない理由を知っていますか。過剰な脂肪組織からは、炎症性タンパクやサイトカインと呼ばれる体に悪影響を与える物質が分泌されます。これらは筋肉の萎縮をさらに進めるだけでなく、血管を傷つけ、動脈硬化を急速に進行させる原因となるのです。つまり、体内で慢性炎症が起き続けている状態なので、炎症性物質を消すことが、血管を守るために重要な課題になります。
参照:日本サルコペニア・フレイル学会|サルコペニア診療ガイドライン2017年版
今日から断ち切る負の連鎖
負の連鎖を断ち切るためだからと言って、いきなりハードな運動を始める必要はありません。大切なのは、ジムに行くことよりも、日常の生活活動を見直すことです。
「座りすぎ」はドミノを加速させる
最初に、意識すべきなのは、座っている時間です。WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、「座りすぎは心臓病、がん、2型糖尿病のリスクを高める」と明記されており、「座りっぱなしの時間を減らし、身体活動を行うことは健康に良い」と推奨されています。また、体を動かすことは、認知機能低下の予防や、うつ・不安症状の改善など、精神的な健康や幸福感の維持にも有益です。デスクワークの時間が長い現代人にとって、座りすぎの解消は急務です。座り続けることは、自ら病気のドミノを押し倒しているのと同じことと言っても良いでしょう。
アクションプラン「30分に1回立つ」
具体的な対策は、あまり難しくはなく、とてもシンプルです。「連続して座る時間を減らす」、これだけで構いません。厚生労働省のガイドなどでも推奨されているように、30分〜1時間に1回は立ち上がるようにしましょう。「仕事中にトイレに行く」「お茶を汲みに行く」「あるいはコピーを取りに行く」といった些細な動作で「座りっぱなし」を中断するだけでも、筋肉への血流が回復します。
「座りっぱなし」は新しい概念であり、現時点では歩数や運動習慣のような調査はありません。しかし、平成25年の国民健康・栄養調査では、平日1日の総座位時間が8時間以上の男性は38%、女性は33%で、世界的にみてかなり長いと報告されています。
参照:厚生労働省|健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(案)
運動と身体活動の違い
「忙しくてジムに行く時間がない」という方も安心してください。エネルギー消費の観点では、スポーツなどの「運動」以外の、家事や通勤などの「身体活動(NEAT)」が消費エネルギーの90%以上を占めていると言われています。つまり、通勤で一駅分歩く・徒歩や自転車通勤に変える、家事(買い物・洗濯・掃除)をキビキビとするというように活動量を増やせば、ジムに行かなくても筋肉維持は十分でき、ドミノは止められます。座り方や歩き方を少し変えるだけで、筋肉維持には十分な効果があるのです。
まとめ
高血圧は血管からのSOSであり、根本原因は筋肉不足にあるかもしれません。メタボリックドミノが全て倒れてしまい、脳卒中や心筋梗塞といった取り返しのつかない事態になる前に、筋肉の維持を意識しましょう。もし、「長年の運動不足で体が動かない」「数値の改善が見られない」という場合は、当院にご相談ください。炎症を抑え組織の修復を促す再生医療のアプローチで、負の連鎖を断ち切るサポートをいたします。
