高血圧予防は筋肉から!50代から始める簡単エクササイズ

医師に「運動しなさい」と言われたものの、「運動をして余計に血圧が上がったらどうしよう」と不安を感じていたり、億劫がったりしている方もいるのではないでしょうか。

50代は血管の柔軟性が低下し始める時期であり、20代の頃のように、気合で乗り切る運動は逆効果になりかねません。しかし、動かなければ血管は老化する一方です。

この記事では、血圧を上昇させずに筋肉を刺激して血管ケアにつなげる「静かなトレーニング」を紹介します。

やってはいけない血圧を上げる筋トレ

良かれと思ってした運動が、命取りになることもあります。注意すべきなのは、以下の3点です。

  • 1. 息を止めて力む(バルサルバ効果):

    重いものを持ち上げる時に「んっ!」と息を止めると、胸腔内圧が急上昇し、血圧が急激に上がります。顔を真っ赤にしてするような筋トレは危険です。

  • 2. 頭を低くする動作:

    急な腹筋運動や、頭が心臓より下になる姿勢は、脳圧と血圧を高めるため避けましょう。

  • 3. 環境の温度差(ヒートショック):

    冬場の早朝ランニングや、冷房の効いたジムでの急な運動は、血管が収縮し事故の元になります。

参照:理学療法科学|高強度レジスタンスエクササイズ前後の心拍数,収縮期血圧,自律神経活動

血圧を下げるアイソメトリック運動

おすすめなのは、アイソメトリック(等尺性筋収縮)と呼ばれる運動法です。アイソメトリックは関節を動かさず、筋肉の長さを変えずに力を入れ続ける運動(例:合掌のポーズや空気イス)を指します。

動かないのに血圧が下がるメカニズムは、筋肉による血管マッサージにあります。筋肉が収縮して血管を一時的に圧迫し、力を抜いた瞬間に一気に血液が流れるために、血管内皮細胞からNO(一酸化窒素)が分泌され、血管が広がるのです。アメリカ心臓協会(AHA)のガイドラインでも、高血圧の有無にかかわらず、成人の血圧を下げるのに効果のある運動として、有酸素運動、ウエイトリフティングなどの動的抵抗の他に、ハンドグリップ運動などが推奨されており、その効果は系統的レビューとメタアナリシス解析でも認められています。

参照:2025 AHA/ACC/AANP/AAPA/ABC/ACCP/ACPM/AGS/AMA/ASPC/NMA/PCNA/SGIM Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation and Management of High Blood Pressure in Adults: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines|BP Management

参照:Isometric exercise training for blood pressure management: a systematic review and meta-analysis

自宅でできる血圧ケア|実践編

ここでは、自宅ですぐに始められる血圧ケアの具体的な方法を2つご紹介します。テレビを見ながらでもできる、手軽で医学的根拠のある方法です。

メソッド1.魔法のタオル握り(ハンドグリップ法)

アメリカ心臓協会(AHA)でも血圧改善の補完療法として挙げている「ハンドグリップ法」を、より手軽にできるようにアレンジしたのがフェイスタオルを使う方法です。カナダの医師が考案した方法で、用意するのはフェイスタオル1枚だけです。

タオルを丸めて筒状にし、片手で握ります。力加減は最大筋力の30%程度(爪が白くならないくらい)が目安です。これを2分間握り続け、1分休みます。その後、反対の手で同じことをします。これを左右2回ずつ、計4セットしましょう。

魔法のタオル握りは、たったこれだけですが、高血圧治療の補助として世界的に注目されている方法です。週3回程度を目安に続けてみてください。

参照:日本経済新聞|タオルを握れば血圧下がる 1日10分、週に3回

メソッド2. 壁を使った空気イス(ウォール・スクワット)

下半身の筋肉を使う場合は、転倒防止のため壁を使います。壁に背中をつけて立ち、足を肩幅に開きましょう。そのままゆっくり腰を落とし、膝が少し曲がった位置で止めてキープします。大切なのは呼吸です。絶対に息を止めず、声に出して数を数えるなどして呼吸しながらしてください。最初は10秒からで良いので、無理に90度まで曲げる必要はなく、きつくない角度で続けることが大切です。

参照:福島民報|1日1動!(筋力アップ 43-2)下半身の筋力・空気椅子

下半身強化の王道スロースクワット

アイソメトリックに慣れてきたら、動きのある(アイソトニック)運動にも挑戦してみましょう。ただし、反動をつけるのは禁物です。おすすめは、スロースクワットです。

ポイントは、4秒・4秒のリズムです。「1、2、3、4」と数えながらゆっくり腰を下ろし、同じ時間をかけて戻ります。スローな動作により、軽い負荷でも筋肉にしっかり効かせられ、血圧の乱高下も防げます。また、立ち上がる時に膝を伸ばしきらない(ノンロック)ようにすると、関節への負担を減らしつつ筋肉への負荷を逃しません。体の中で最も大きな大腿四頭筋を鍛えることで、糖代謝が改善し、全身の血行促進につながります。

参照:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~「スロートレーニングとは」

参照:日本経済新聞|スロースクワット 筋肉を効率的に鍛え、姿勢も改善?

まとめ

正しい方法で行えば、運動は副作用のない治療薬になります。ただし、1日やったからといってすぐに数値が変わるわけではありません。「継続は力なり」です。まずは4週間続けてみましょう。

なお、収縮期血圧が180mmHg以上ある場合などは、運動前に必ず主治医に相談してください。もし「膝や腰が痛くてスクワットができない」という場合は、関節治療を含めた再生医療的アプローチで、運動できる体を取り戻すサポートも可能です。