関節のこわばりはなぜ起こる?加齢による変化との関係

「朝、布団から起き上がろうとした瞬間に体がギシギシする」。そういった関節のこわばりを感じたことはありませんか。

起床時や動き始めに関節が動かしにくい、スムーズに歩けないといった症状は、40〜60代の中高年の方から多く聞かれるお悩みのひとつです。不快なこわばりの正体は、寝相の悪さなどではなく、加齢に伴う関節周囲の構造的な変化が原因で起きています。

この記事では、関節がこわばる理由と、進行を防ぐ日常ケア、そして関節治療における再生医療の可能性について解説します。

関節がこわばる理由|加齢による3つの変化

関節は、骨と骨が直接ぶつからないよう軟骨がクッションの役割を果たし、その周囲を筋肉や靭帯が支えることで滑らかな動きを可能にしています。しかし、年齢を重ねるにつれてこれらの組織は少しずつ変化し、関節本来の動きを妨げるようになります。

ここでは、関節のこわばりを引き起こす「加齢による3つの変化」について詳しく見ていきましょう。

① 軟骨の水分量低下と弾力性の低下|軟骨の変化

軟骨は加齢とともに水分量が減少し、成分そのものも変化することで徐々に薄くなっていきます。水分を失った軟骨は弾力性が低下し、関節へ加わる衝撃を十分に吸収できなくなります。

その結果、日常生活で繰り返される動作による負担や損傷を受けやすくなり、関節のこわばりや痛みといった初期症状につながります。

出典:MSDマニュアル|筋骨格系への加齢の影響

② 細胞外マトリックスの硬化と遺伝子レベルの変化

関節軟骨は、細胞の周囲を満たす「細胞外マトリックス」と呼ばれるコラーゲンやヒアルロン酸の網目構造によって支えられています。加齢が進むと、コラーゲンに糖が結びつく「糖化」が起こり、AGEs(終末糖化産物)と呼ばれる老化物質が蓄積します。

AGEsが増加すると、コラーゲン線維同士が過剰に結びつき、本来しなやかであるはずの組織が硬くなります。この細胞外マトリックスの硬化は、関節の柔軟性を低下させ、こわばりの大きな原因のひとつと考えられています。

さらに、加齢は遺伝子の働きにも影響を及ぼします。コラーゲンを産生する遺伝子の働きは低下する一方で、軟骨を分解する酵素を産生する遺伝子は活性化します。そのため、軟骨の修復が分解に追いつかなくなり、関節の老化が進みやすくなります。

出典:理学療法―臨床・研究・教育|細胞外マトリックスの硬化と遺伝子レベルの変化

③ 筋肉・靭帯の柔軟性低下|関節を支える周辺組織の老化による硬化

関節のこわばりは、軟骨だけでなく関節を支える周囲の組織の老化とも深く関係しています。

加齢に伴い筋肉量は減少し(サルコペニア)、さらに筋肉の繊維の間へ脂肪が入り込む「脂肪化」や、硬い線維組織が増える「線維化」が進行します。その結果、筋肉本来のしなやかな伸縮性が失われていきます。

また、靭帯や腱では、ゴムのような弾力を生み出すエラスチンが減少します。関節を支える組織全体の柔軟性が低下することで、関節を滑らかに動かすための「あそび」が少なくなり、動き始めに強い抵抗感やこわばりを感じやすくなります。

出典:国立長寿医療研究センター|高齢者の関節疾患

関節の柔軟性を保ち、こわばりを防ぐ日常ケア方法

関節のこわばりを放置すると、症状が徐々に進行し、変形性関節症などにつながる可能性があります。一方で、生活習慣を見直して関節の柔軟性を維持することは、症状の進行予防につながります。

ここでは、今日から実践できる具体的なケア方法をご紹介します。

適正体重の維持

体重が増えると、膝をはじめとする関節へ直接大きな負荷がかかります。特に肥満傾向にある方では、関節への負担が大きくなるため、適正体重を目指した無理のない減量が関節を守る第一歩となります。

生活の見直し

関節への負担を軽減するためには、日常生活の環境を見直すことも重要です。膝や股関節へ負担がかかりやすい和式の生活(畳に座る、布団から起き上がるなど)はできるだけ避け、椅子やベッドを使用する洋式の生活へ切り替えることが勧められます。

また、長時間の立ち仕事や歩行には注意し、関節を冷やさないよう保温を心がけましょう。痛みがある場合は無理に動かさず、安静にして関節を保護することも大切です。

運動療法

痛みのない範囲で関節周囲の筋力を維持・強化することは、こわばりの改善や進行予防に役立ちます。特に、関節へ体重の負担がかかりにくい「水中歩行」や「自転車(エアロバイク)」は、無理なく継続しやすい運動として推奨されています。

また、椅子に座った状態や仰向けに寝た状態で、膝をまっすぐ伸ばしたまま脚を持ち上げ、数秒間保持する「SLR(下肢伸展挙上)訓練」も、安全に筋力を鍛えられる代表的なトレーニングです。

出典:国立長寿医療研究センター|高齢者の関節疾患

出典:日本内科学会雑誌 106 巻 10 号|内科医が知っておきたい高齢者の整形外科疾患

痛み止めから新たな治療選択肢へ|関節を支える再生医療

関節のこわばりや痛みは、薬物療法(痛み止めやヒアルロン酸注射など)によって症状の軽減を図ることができます。一方で近年は、損傷した組織の修復を目指す再生医療も、新たな治療選択肢として注目されています。特に、関節の変形が比較的軽度で軟骨が十分に残っている段階では、治療法によっては再生医療が適応となる場合があります。

関節に対する再生医療には、主に以下の3つの方法があります。

  • 血液を利用する治療:患者さん自身の血液から有効成分を抽出し、関節内へ投与する方法
  • 幹細胞を利用する治療:患者さん自身から採取した幹細胞を用いて、損傷した組織の修復を目指す方法
  • 軟骨移植:関節から採取した軟骨を培養し、損傷部位へ移植する方法

このうち、手術を伴わない治療は「1」の血液を利用する方法です。一方、「2」の幹細胞治療と「3」の軟骨移植では、治療に必要な細胞や軟骨を採取するための処置が必要となります。

幹細胞を利用する治療は、幹細胞が持つ組織修復能力を活用する治療法として研究や臨床応用が進められています。また、「3」の自家培養軟骨移植については、2026年1月から、約1,000万人が罹患しているとされる変形性膝関節症にも保険適用が拡大されました。

それぞれ適応となる病状や治療方法、期待される作用には違いがありますが、いずれも患者さん自身の血液や細胞を利用する治療であるため、アレルギーなどの副作用リスクは比較的少ないことが報告されています。

出典:東京女子医科大学整形外科|関節再生医療|人工関節

出典:広島大学病院|学長開発の自家培養軟骨移植治療が「変形性膝関節症」にも保険適用 根治の可能性開く

再生医療については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

【医師監修】膝の仕組みについて解説!軟骨再生医療で健康的に過ごす方法

まとめ

朝起きたときの「体がギシギシする」という関節のこわばりは、加齢に伴う関節や周囲組織の変化によって起こることがあります。症状を放置すると、痛みが強くなったり、変形性関節症へ進行したりする可能性もあるため、早い段階から適切なケアを行うことが大切です。

適正体重の維持や運動療法、生活習慣の見直しは、関節の柔軟性を保つための基本となります。また、症状や関節の状態によっては、再生医療を含むさまざまな治療法が選択肢となる場合もあります。こわばりや痛みが続く場合は、自己判断で放置せず、専門医へ相談し、ご自身の状態に合った治療法について検討することが大切です。