
更年期太りと聞くと、多くの方が女性の問題だと思われるかもしれません。しかし、「食事や運動に気を使っているのに、お腹周りの脂肪だけがどうしても落ちない…」といった悩みは、40代以降の男性にも決して珍しいものではありません。
更年期太りの原因は、食べ過ぎや運動不足ではなく、男性更年期(LOH症候群)による「テストステロンの減少」の可能性があります。
この記事では、男性特有の更年期太りの原因、「運動」「食事」「サプリメント」でできる対策について、解説します。
目次
更年期に太りやすくなる2つの原因
40代を過ぎてから太ってしまう原因は、意志の弱さではなく、男性ホルモン(テストステロン)の減少が関係しています。
原因1:筋肉量の減少と基礎代謝の低下
男性らしい体つきを維持するには、男性ホルモン(テストステロン)が不可欠です。テストステロンが加齢とともに減少すると、筋肉量が低下しやすくなります。筋肉は、じっとしていてもエネルギーを消費する基礎代謝の大部分を担っているため、筋肉が減れば、体は自然と太りやすく、痩せにくい状態になってしまうのです。
また、テストステロンには内臓脂肪の蓄積を抑える働きもあるため、減少するとお腹周りに脂肪が付きやすくなってしまいます。
原因2:「肥満とテストステロン低下」の悪循環
厄介なのは、肥満とテストステロンの低下が互いに影響し合う悪循環です。
脂肪細胞には、テストステロンを女性ホルモンに変えてしまうアロマターゼという酵素があります。更年期にテストステロンが減って太ると脂肪が増え、脂肪細胞の働きで、さらにテストステロンが減るという負のスパイラルに陥ってしまうのです。更年期太りを解消するには、肥満とテストステロン低下の悪循環を断ち切る必要があります。
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」
【運動でできる対策】テストステロンを高め、筋肉を維持するトレーニング
男性更年期の肥満を解消するには、運動が大切です。運動は、ウォーキングなどの有酸素運動と、筋力トレーニングなどのレジスタンス運動に大別されます。
心肺機能や筋力が高いのは、更年期のさまざまな症状に対する予防効果が期待できます。特に、男性機能の一つである勃起機能の維持には、有酸素運動能力と筋力の両方を高く保つのが大切です。
有酸素運動
ウォーキング・ジョギング・サイクリング・水泳など、比較的低い強度で長時間続けられる運動です。主な目的は、脂肪燃焼や心肺機能の向上ですが、血中のテストステロン濃度を高める上で重要とされています。
- おすすめの目安:1回あたり30~60分程度、週に3~5日
- ポイント:速歩きや軽いジョギングなど、やや高い強度の運動が効果的
レジスタンス運動(筋力トレーニング)
レジスタンス運動とは、重りや自身の体重を利用して、高い強度で短時間行う運動で、主な目的は筋肉量と筋力を増やすことです。レジスタンス運動は、基礎代謝を上げるために効果的です。
- 胸・背中・太ももなど大きな筋肉を中心に鍛える
- 8~12回が限界の強度で2~4セット、週2~3日が理想
- 自重トレーニング(腕立て伏せ・スクワット)からでもOK
過度な運動は逆効果
モチベーションが高い時ほど注意したいのが、運動のやりすぎです。長時間にわたる過度なトレーニングは、体にストレスを与え、ストレスホルモンのコルチゾールを分泌させます。コルチゾールは、テストステロンを低下させる可能性があるため、適切な休息もトレーニングの一環と考えることが大切です。
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」
出典:日本内科学会雑誌第107巻第2号「肥満症診療ガイドライン2016」
出典:厚生労働省「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ストレッチングの効果」
【食事でできる対策】内臓脂肪を減らし、男性ホルモンをサポートする食事
運動の効果を最大限に引き出すには、食事の見直しが欠かせません。食事療法と運動を組み合わせることで、テストステロン値の上昇に相乗効果が期待できます。
脂質を多く含む食事をしていると太ってしまいますが、テストステロン値を高める効果が報告されているのが、以下のような良質な脂質です。
- オリーブオイル・アルガンオイル(不飽和脂肪酸)
- 青魚に多いn-3系脂肪酸
これらの脂質は抗酸化作用を持ち、テストステロン値上昇に寄与すると考えられています。また、亜鉛などのミネラル不足もテストステロン低下の原因となります。特定の食品に偏るのではなく、3食規則正しく、肉・魚・野菜・海藻などをバランス良く食べることが基本です。
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」
【サプリメントでできる対策】上手に活用して食事をサポート
基本は食事からの栄養摂取ですが、補助的にサプリメントを活用する方法もあります。ただし、多くの健康食品は、テストステロン値への有効性の科学的根拠がまだ十分ではありません。
サプリメントの活用を検討できるのは、食事制限などで明らかに特定の栄養素が不足する場合です。例えば、以下のような栄養素が挙げられます。
- 亜鉛・セレン・マグネシウム:テストステロン合成をサポート
- ビタミンD:抗酸化作用を助け、間接的にホルモンバランスを整える
肥満男性でテストステロン値が低い場合には、ビタミンD摂取を検討する余地があるかもしれません。
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」
まとめ
40代以降の男性が太ってしまうのは、意志の弱さや努力不足ではありません。テストステロンの減少という、理由があるのです。
太ってしまう原因を正しく知って、テストステロン値を上昇させる有酸素運動や筋肉量を維持するための筋力トレーニング、バランスの取れた食事を摂ることが、健康的な体を取り戻すための確実な方法です。
セルフケアで改善が難しい場合や、倦怠感や意欲低下といった他の症状も伴う場合は、専門医に相談し、ホルモン値を調べてみることも重要です。根本的な原因にアプローチすることで、解決の糸口が見つかるかもしれません。