筋肉量アップで血管も若々しく!健康寿命を延ばすヒント

血管も肌と同じように老化します。ホースが時間とともに硬くひび割れやすくなるように、私たちの血管も加齢により弾力を失っていきます。しかし、諦める必要はありません。筋肉をつけることで血管を内側から若返らせる物質が分泌されることをご存知でしょうか。

この記事では、健康寿命を延ばすために知っておきたい筋肉が持つ力と、再生医療がもたらす血管ケアの可能性について解説します。

筋肉がホルモン臓器と言われる理由|マイオカインの働き

かつて筋肉は、体を動かすための組織に過ぎないと思われていました。しかし昨今の研究で、筋肉は様々な生理活性物質(ホルモン)を分泌する内分泌器官でもあることが判明しました。これらは総称して「マイオカイン(Myokines)」と呼ばれています。代表的なマイオカインには、IL-6(インターロイキン-6)とアイリスイン(Irisin)があります。

運動によって筋肉から分泌されたIL-6の働きは、脂肪の分解を促し、体内の炎症を抑えることです。また、アイリスインは運動ホルモンとも呼ばれ、溜め込む脂肪(白色脂肪細胞)を燃やす脂肪(褐色脂肪細胞)に変えたり、神経細胞を保護したりする働きが期待されています。

これらの物質が血流に乗って全身を巡ることで、血管内皮細胞の機能が改善され、動脈硬化の進行を抑えるなど、全身のメンテナンス役として働いているのです。

参照:J-stage|COPD患者における身体活動性とマイオカイン

血管を広げて血圧を下げる|一酸化窒素(NO)の働き

筋肉を使うメリットは、化学物質の分泌だけではありません。運動による物理的な刺激も重要です。運動をして心拍数が上がり、血流の速度が増すと、血管の内壁が血液によって擦られます。この擦れる刺激は、血管内皮細胞に対するNO(一酸化窒素)分泌のスイッチとなります。逆に言えば、じっとしていてはこのスイッチは入りません。

スイッチが入り分泌されたNOは、血管を取り巻く筋肉(平滑筋)に働きかけ、緊張を解いて血管を広げます。その結果、血流がスムーズになり血圧が低下するのです。NOの作用は運動中だけでなく、継続することで安静時の血圧安定にも寄与します。さらにNOには血管の酸化を防ぐ作用もあり、動脈硬化予防にも直結します。

つまり、運動そのものが、副作用のない血管拡張薬を体内で作り出す行為になるのです。薬に頼る前に、自分の筋肉を使って、眠っている血管の機能を呼び覚ましましょう。

参照:日本農芸化学会「化学と生物」|運動機能における一酸化窒素(NO)の役割

再生医療の視点|血管ケアは細胞レベル

運動が体に良いのは、細胞自身から修復物質が出るからです。近年注目される再生医療(幹細胞治療や培養上清液治療など)は、サイトカインやエクソソームといった修復物質を、医療の力で直接体内に取り入れるアプローチとも言えます。ここでは、研究報告から再生医療のメカニズムについて、説明します。

幹細胞が血管を治す仕組み|研究報告

これまで、投与された幹細胞が具体的にどうやって血管を治すのか、詳細は不明な点が多くありました。しかし、2020年に日本の研究グループ(神戸医療産業都市推進機構など)が発表した報告により、謎が解明されつつあります。

研究によると、幹細胞は傷ついた血管内皮細胞を見つけるとぴったりくっつき、細胞間にギャップ結合という微細なトンネルを作ります。そして、ギャップ結合を通して直接グルコースなどのエネルギー源を弱った細胞へ供給していることが判明しました。つまり、幹細胞がエネルギーを与え、エネルギーをもらった血管細胞は、自力で再生をスタートさせるのです。

この研究は、幹細胞が障害された細胞に分化したり、サイトカインなどで命令を与えて再生をスタートさせたりしているという従来の定説を覆すものあり、再生医療において新しい考え方が存在することを明らかにしました。

血管が若返る仕組み|研究報告

また、2015年の海外の研究では、間葉系幹細胞(MSC)を投与することで、傷ついた血管内皮細胞の機能そのものが回復したという報告があります。具体的には、血管を広げるために不可欠な酵素eNOS(一酸化窒素合成酵素)の活性が回復し、血管を詰まらせるプラーク(動脈硬化の塊)の形成が抑制されました。

加齢で傷ついた血管細胞そのものを修復しようとするのが再生医療の考え方です。運動による日々の自助努力と、医療による細胞レベルのケアという、両輪を回すことが、人生100年時代を健康に過ごすための答えと言えるでしょう。

参照:Bone Marrow Mononuclear Cells Activate Angiogenesis via Gap Junction–Mediated Cell-Cell Interaction
参照:Mesenchymal Stem Cells Ameliorate Atherosclerotic Lesions via Restoring Endothelial Function

まとめ

筋肉をつけることは、全身を健康に、そして健やかに過せることにつながります。筋肉は単なる力の源ではなく、血管を若々しく保つために大切な臓器です。スクワット1回、階段の上り下り1つが、体内で血管修復のスイッチを押しています。

どうしても運動が難しい場合や、より積極的なケアを望む場合は、再生医療という選択肢もあります。自身のライフスタイルに合わせ、血管を守るアクションを今日から始めてみませんか。