血管の老化とは?年齢とともに血流が低下する理由

「肩こりが治らない」「手足が冷える」「集中力が続かない」「ED(勃起不全)に悩んでいる」といった中高年男性にみられる不調は、血管の老化による血流低下が関係している可能性があります。血液は全身の細胞へ酸素や栄養を届ける重要な役割を担っており、血流の状態は健康維持に欠かせません。

この記事では、加齢に伴う血管や血流の変化の仕組み、血管の健康を維持するための生活習慣、そして再生医療の可能性について解説します。

血管年齢=実年齢ではない?動脈硬化と血流低下のメカニズム

血管は血液を通して全身の細胞へ酸素と栄養を届けています。しかし加齢とともに血管は弾力を失って硬くなるだけでなく、さまざまな臓器では血管そのものの密度も低下すると考えられています。

一方で、血管の老化速度は人によって異なり、必ずしも実年齢と一致するわけではありません。血管老化に深く関わるのが、血管の最も内側を覆う「血管内皮細胞」の老化です。血管内皮細胞が老化すると細胞のエネルギー代謝に異常が生じ、新しい血管を作る力(血管新生能)が低下すると考えられています。その結果、全身への血流が滞り、酸素や栄養が十分に届きにくくなることで、さまざまな不調につながる可能性があります。

出典:日本生化学学会|血管内皮細胞老化と老化関連疾患の関わり

血流を改善し、血管の健康を保つための生活習慣

血流を維持し、血管の健康を保つためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。

禁煙

血管の健康維持のために最も重要な取り組みの一つが禁煙です。喫煙は年齢や性別を問わず血管を傷つけ、動脈硬化性疾患の大きな危険因子となります。また、自身が喫煙しない場合でも、受動喫煙による影響を避けることが大切です。

現在喫煙している方は、自力で禁煙が難しい場合には禁煙外来などで禁煙補助薬を用いた治療を受けることも推奨されています。

飲酒

飲酒は適量を守り、多量飲酒を避けることが大切です。動脈硬化予防のための目安として、純アルコール摂取量は男性で1日40gまで、女性で20gまでとされています。

以下は女性における純アルコール20gの目安量です。日頃の飲酒量を見直す際の参考にしてください。

種類 アルコール度数 目安量
日本酒 15% 180ml
ビール 5% 500ml
焼酎 25% 110ml
ワイン 14% 180ml
ウイスキー 43% 60ml
缶チューハイ 5% 500ml

男性の目安は上記の約2倍までとなります。

肥満およびメタボリックシンドローム対策

内臓脂肪の蓄積は血管老化を進行させる要因の一つです。適切な体重や腹囲を維持することが重要ですが、急激なダイエットはリバウンドにつながる可能性があります。

無理に短期間で体重を減らすのではなく、3〜6カ月かけて現在の体重や腹囲から3%以上の減少を目標とするなど、継続しやすい方法で取り組むことが推奨されます。

食事

血管の健康を保つためには、過食を避けることが基本です。そのうえで肉類を減らし、魚の摂取を増やすことが勧められています。特に青魚に含まれる魚油は血管へ良い影響を与えると考えられています。一方で、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸やコレステロールの摂り過ぎには注意が必要です。

また、玄米などの未精製穀類、緑黄色野菜を含む野菜、海藻、大豆・大豆製品、ナッツ類を積極的に取り入れ、塩分を控えめにした食生活が推奨されています。

運動

血流を促し、血管の健康を維持するためには継続的な有酸素運動が効果的とされています。有酸素運動とは、ウォーキングや軽いジョギング、水泳、自転車など、酸素を利用しながら行う運動です。

「少し息が弾む程度」の中強度の有酸素運動を1日合計30分以上、週3回以上(可能であれば毎日)行うことが理想です。忙しい場合でも、週150分以上を目標に継続して取り組むことが推奨されています。

出典:日本動脈硬化学会|動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年度版

出典:厚生労働省|アルコール(男性編)

血管の健康と再生医療

生活習慣の改善は血管の健康維持に重要ですが、血流低下が進行した場合の新たな治療アプローチとして、近年は再生医療にも注目が集まっています。2022年には、東京医科大学病院が開発した「完全自家血管新生治療法」が先進医療として承認されました。

この治療法では、血流が悪化し壊死のリスクがある下肢に対して、自身の骨髄から採取した細胞を自身の血液で培養し、筋肉へ注射します。血管新生を促すことで血流の改善を目指す治療法です。

患者自身の細胞と血液を用いるため、他人の細胞や動物由来成分を使用せず、拒絶反応のリスクが低いことが特徴とされています。細胞が持つ自己修復機能を活用した血管再生治療として、研究と臨床応用が進められています。

出典:東京医科大学病院|先進医療として承認「自己骨髄由来培養間葉系細胞移植による末梢動脈疾患に対する完全自家血管新生治療法」~虚血による下肢切断の回避、疼痛軽減を目指して~

再生医療については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

再生医療とは?幹細胞治療が効果的な疾患や副作用について解説

まとめ

血管の老化は自覚症状がないまま進行し、将来的に動脈硬化やさまざまな循環器疾患のリスクを高める可能性があります。肩こりや手足の冷え、疲れやすさなどの不調を「年齢のせい」と放置せず、生活習慣を見直しながら必要に応じて専門医へ相談することが大切です。

禁煙や適度な運動、バランスの取れた食生活などを継続することは、血流や血管の健康維持につながります。また、再生医療をはじめとする新たな治療法についても研究が進んでおり、今後の発展が期待されています。